商業施設の原状回復費用が1,850万円|「まともに退店できるのか」と恐怖を感じた適正査定事例

商業施設の外観|雑貨物販店の原状回復費用適正査定事例
※イメージ画像です

事例概要

項目内容
クライアント雑貨物販店N社
建物用途愛知県名古屋エリアの商業施設
契約面積約50坪
N社の当初想定額約700万円
当初見積金額約1,850万円
最終合意額約1,300万円
最終合意額の当初見積比約70.3%
3ACのサポート内容技術・積算面からの適正査定、査定見積書の提示・説明、相見積書の作成

※表中の金額は、すべて税込の概算です。
※企業名、建物名および関係会社名は匿名化しています。

名古屋エリアの商業施設から退店することになった、雑貨物販店N社。

貸主側の指定業者から提示された原状回復工事費は、約50坪の店舗に対して、約1,850万円でした。

これは、N社が想定していた金額を大きく上回り、出店時の内装工事費に近い水準でした。

「本当に、この金額を支払わなければ退店できないのか」

「このまま、まともに退店できるのか」

N社が感じたのは、単なる不安ではありません。予定どおり退店できなくなるのではないかという、恐怖に近い感覚でした。

N社から相談を受けた株式会社スリーエー・コーポレーション(以下、3AC)は、原状回復工事見積について、技術・積算面から適正査定を実施しました。

査定見積書を提示して査定内容を説明するとともに、比較検討のための相見積書を作成し、その後、これらの資料を判断材料として関係者間で協議が行われ、約1,300万円で最終合意に至りました。

本記事では、N社が商業施設から退店する際に直面した原状回復費用の問題と、3ACが行った適正査定についてご紹介します。

雑貨物販店N社を襲った商業施設退店時の恐怖

N社は、東京に本社を構え、リビング・キッチン雑貨などを取り扱う全国展開の店舗企業です。

「自分らしさ」をコンセプトに、暮らしを彩る商品を幅広く取り扱い、多くのお客様に親しまれる店舗を展開してきました。

そのN社が、名古屋エリアの商業施設に出店していた約50坪の店舗を退店することになりました。

N社が原状回復費用として想定していたのは、敷金と同程度の約700万円です。

工事費や資材費が上昇していることは理解していましたが、それを考慮しても、おおむね想定額の範囲内で退店できると考えていました。

ところが、貸主側の指定業者から提示された見積金額は、約1,850万円。単純計算すると、坪単価は約37万円です。

N社にとって衝撃だったのは、金額の大きさだけではありません。

この金額が、店舗を出店したときにかかった内装工事費と、ほとんど変わらない水準だったことです。

店舗をつくるために多額の費用をかけ、その店舗を壊して退店するために、もう一度ほぼ同じ金額を負担する。
N社にとって、簡単に受け入れられる話ではありませんでした。

商業施設へ出店するときには、貸主側や管理会社などと多くの調整を重ね、時間と費用をかけて店舗を開業します。

それにもかかわらず、退店時には高額な見積書を前に、自社だけで内容を判断しなければならない。

しかも、退店期限は待ってくれません。

提示された金額を受け入れなければ、予定どおり退店できないのではないか。N社は、そのような恐怖を感じていました。

さらに、この問題は現在の店舗から退店するためだけのものではありませんでした。

「これほどの費用が必要なら、今後も商業施設へ出店できるのだろうか」

今回の原状回復費用は、N社の今後の出店判断にも影響しかねない問題だったのです。

商業施設の原状回復費用が高くなりやすい6つの理由

商業施設の原状回復費用は、路面店や小規模なテナントと比べて高くなることがあります。

ただし、「商業施設だから高くても仕方がない」と、見積内容を確認せずに判断するのは適切ではありません。

まずは、費用が高くなりやすい一般的な理由を理解し、そのうえで個別の工事項目、数量、単価が適正に計上されているかを確認する必要があります。

なお、以下は商業施設に見られる一般的な施工条件であり、すべてが本事例に該当するものではありません。

1.夜間や休館日に工事が限定されることがある

営業中の商業施設では、来館者の安全や他店舗への影響を避けるため、夜間や休館日に原状回復工事を行う場合があります。

作業時間が限定されることで、人員配置や安全管理にかかる費用が増えたり、工期が長くなったりすることがあります。

2.資材や廃材の搬出入に制限がある

商業施設では、搬出入できる時間、使用する通路やエレベーター、車両の待機場所などが指定されることがあります。

限られた時間内に作業するために人員を増やしたり、廃材を一時保管したりする必要が生じれば、その費用も見積書に反映されます。

3.共用部分の養生や安全管理が必要になる

廃材を搬出する際には、施設内の床、壁、扉、エレベーターなどを傷つけないよう、搬出経路を養生する必要があります。

施設によっては、作業員や警備員の配置、来館者との動線分離、防音・防塵対策などが求められる場合もあります。

4.施設全体の設備との調整が必要になる

商業施設の店舗には、スプリンクラー、火災報知設備、空調、電気、排煙など、施設全体とつながった設備があります。

これらの撤去、移設、復旧には、施設側との調整や専門業者による施工、工事後の確認が必要になることがあります。

5.施設指定の施工会社(指定業者)へ依頼する範囲がある

商業施設では、建物の安全性や工事品質を維持するため、工事内容によって施工会社が指定されることが多くあります。

指定業者制度には、施設の設備や施工ルールを理解した会社が工事を行えるという利点があります。

一方、テナント側が施工会社を自由に選べない範囲では、複数社の価格を比較することが難しくなります。

6.原状回復範囲が広く設定されていることがある

店舗の原状回復範囲は、賃貸借契約書、原状回復条件、工事区分表、施設の施工基準などによって異なります。

床、壁、天井だけでなく、什器、照明、電気、空調、防災設備、給排水設備、看板などが対象になる場合もあります。

出店時に大規模な内装工事を行っている店舗ほど、撤去・復旧する範囲が広くなる可能性があります。

原状回復費用が高くなる理由と見積内容が適正であることは別

商業施設には、原状回復費用が高くなる合理的な理由があります。

しかし、施工条件が厳しいことと、提示されたすべての工事項目、数量、単価が適正であることは別の問題です。

見積書を確認するときは、少なくとも次の内容を整理する必要があります。

  • 契約上必要な原状回復範囲と一致しているか
  • 不要な工事や重複した工事項目が含まれていないか
  • 面積や数量の算出根拠が明確か
  • 単価が工事内容や施工条件に対応しているか
  • 人工数や工期が過大に計上されていないか
  • 諸経費や現場管理費の内訳が説明されているか

見積書に記載された工事が、すべて当然に契約上必要になるとは限りません。

契約資料や図面などと照合し、工事範囲や見積金額の根拠を確認することが重要です。

ただし、工事や積算の専門知識がなければ、テナント企業だけで適正性を判断することは簡単ではありません。

そこで必要になるのが、原状回復工事見積を技術・積算面から確認する「適正査定」です。

3ACが原状回復工事見積を適正査定

高額な見積を前に自社だけでは判断できないと考えたN社は、3ACへ相談しました。

3ACでは、N社から提供された原状回復工事見積書や工事関係資料などを確認し、技術・積算面から適正査定を行いました。

適正査定は、総額だけを見て「高い」「安い」と評価するものではありません。

工事範囲、工事項目、数量、単価、人工数、施工条件、諸経費などを一つずつ確認し、提示金額の根拠を明らかにしていく作業です。

3ACは、適正査定の結果をまとめた査定見積書をN社へ提示し、査定内容を説明しました。

さらに、貸主側指定業者から提示された見積書と比較検討するための相見積書を作成し、N社が原状回復費用を判断するための材料を整理しました。

3ACの役割は、原状回復工事見積を技術・積算面から適正査定し、N社の判断材料を整理することです。査定見積書と相見積書をもとに、その後、見積内容について関係者間で協議が行われました。

商業施設内の雑貨物販店における原状回復工事前の店舗内装
原状回復工事見積の適正査定を行った雑貨物販店

原状回復費用は1,300万円で最終合意|それでも残った負担感

3ACが提示した査定見積書と相見積書を客観的な根拠として関係者間で協議が行われた結果、原状回復費用は約1,300万円で最終合意に至りました。

当初見積との差額は約550万円で、最終合意額は当初見積額の約70.3%です。

項目内容
契約面積約50坪
N社の当初想定額約700万円
当初見積金額約1,850万円
当初坪単価約37万円/坪
最終合意額約1,300万円
当初見積との差額約550万円
最終合意額の当初見積比約70.3%

※表中の金額は、すべて税込の概算です。端数処理の関係で、坪単価や比率の計算結果が一致しない場合があります。

しかし、N社が最終的な金額に十分納得できたわけではありません。

N社が当初想定していた原状回復費用は、約700万円でした。

約1,300万円で最終合意しても、その金額は当初想定額を大きく上回っています。

当初見積があまりにも高かったため、N社には「金額が見直された」という実感がほとんどありませんでした。

外から数字だけを見れば、約550万円の差は大きく見えます。

しかし、実際に約1,300万円を負担する企業の立場からすれば、決して小さな金額ではありません。

「このようなことが続けば、今後は怖くて簡単に出店できない」

それが、商業施設から退店するN社の率直な感覚でした。

適正査定の目的は、単に見積金額を下げることではありません。

工事範囲、数量、単価などを確認し、企業が原状回復費用を判断するための客観的な根拠をつくることにあります。

今回の事例でも、N社が査定見積書と相見積書を判断材料として見積内容を確認できたことに、大きな意味がありました。

高額な原状回復費用は次の出店判断にも影響する

商業施設への出店は、テナント企業にとって大きな投資です。

出店時には、内装工事費、什器、設備、保証金、採用費、広告費など、さまざまな初期費用が発生します。

そのうえ、退店時に出店時の内装工事費に近い原状回復費用を提示されれば、企業は今後の出店を慎重に考えざるを得ません。

原状回復費用は、単に一つの店舗を閉めるための工事費ではありません。

新規出店、店舗の統廃合、不採算店舗からの撤退など、企業の店舗戦略全体に関わる費用です。

「商業施設だから高額でも仕方がない」

「指定業者だから内容を確認できない」

そう考えて工事を発注する前に、まずは見積書の内容を確認する必要があります。

原状回復範囲、工事項目、数量、単価、施工条件を整理し、企業として判断できる根拠を持つ。

それが、次の店舗展開へ進むためにも重要です。

商業施設・店舗の原状回復見積でお困りではありませんか?

商業施設や店舗の退店にあたり、次のようなお悩みはありませんか。

  • 見積金額の根拠を社内で判断できない
  • 過去の退店案件と比べて坪単価が大幅に高い
  • 出店時の内装工事費に近い見積金額を提示された
  • 社内稟議に使用できる客観的な資料が必要
  • 貸主側との関係を保ちながら見積内容を確認したい
  • 退店期限や着工予定日が迫っている

3ACでは、原状回復工事見積を技術・積算面から適正査定し、企業の判断材料となる査定見積書を提示します。

指定業者から見積書が提示された段階で、早めにご相談ください。

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商業施設・店舗の原状回復費用に関するよくある質問

指定業者が決まっていても原状回復見積を適正査定できますか?

はい。指定業者を変更できない場合でも、工事範囲、工事項目、数量、単価、施工条件などを技術・積算面から適正査定できます。

指定業者を変更できるかどうかは、賃貸借契約や施設の工事ルールによって異なります。

商業施設の原状回復費用はなぜ高くなるのですか?

商業施設では、夜間工事、搬出入制限、共用部分の養生、安全管理、施設設備との調整など、施設独自の施工条件が設けられることがあります。

ただし、施工条件が厳しいことと、提示されたすべての工事項目、数量、単価が適正であることは別の問題です。

原状回復見積はいつ相談すればよいですか?

貸主側の指定業者から見積書が提示された後、原状回復工事を正式に発注する前の段階が適しています。

退店期限や着工日が迫ると、適正査定や関係者間の協議に使える時間が限られるため、早めの相談が重要です。

適正査定にはどのような資料が必要ですか?

主に、賃貸借契約書、原状回復条件、指定業者の見積書、工事区分表、図面、入居時の資料や写真などを確認します。

資料がすべてそろっていない場合でも、現在お持ちの資料からご相談いただけます。

適正査定を依頼すれば、必ず原状回復費用が見直されますか?

いいえ。

契約内容、原状回復範囲、施工条件、見積内容は案件ごとに異なるため、金額の見直しや本事例と同様の結果を保証するものではありません。

3ACでは、原状回復工事見積を技術・積算面から適正査定し、依頼企業が判断するための根拠を整理します。

契約解釈や法律上の判断が必要な場合も対応できますか?

3ACは、原状回復工事やB工事の見積内容について、技術・積算面から適正査定を行います。

契約解釈、法的判断、代理交渉などの法律事務が必要な場合は、弁護士が担当する領域となります。必要に応じて弁護士等と連携し、技術面と法律面を分けて対応します。