原状回復費用の値下げ交渉で注意する3つのこと

原状回復・B工事知ってトクするコラム

オフィスの原状回復の相場や単価を簡単査定するには、「坪単価×オフィス/店舗の面積」で算出できますが、住居目的の賃貸のように消費者契約法で守られていない為、事業目的の賃貸については各テナントのこだわりの内装により原状回復の内容は大きく違います。

安易に、原状回復費を値下げ交渉してしまうと、本来回復しなければならない工事についても、工事区分が曖昧だったり原状が曖昧だったりすることにより、結果的に追加工事が発生してコストが高くなる場合も珍しくありません。当初の見積りより増額や追加になることもあります。

ここでは、原状回復の値下げ交渉において慎重に行うべき事項を簡単に解説します。

改正民法により原状回復情報開示も説明責任も貸主責任となった現在、分からないことは納得いくまで聞くことが大切です。その際は必ず証を残しましょう。

第三者(原状回復の専門家)による適性判断

オフィスや店舗などの原状回復費用について、ビルオーナーとその指定する業者もしくは賃貸人、AM・PM業社で見積りから合意までの交渉が行われます。しかし、ビルオーナー側も、頻繁にオーナーチェンジが行われる現在、ビルの現状を理解していないケースも多く、原状回復における知識が豊富ではないAM・PMとの話合いも多いです。原状回復の専門知識を持っているのは工事を行う指定業者だけ、というケースがよく見受けられますが、その指定業者を賃借人が指名することはできません。

そのため、見積書を作成する指定業者としては、「高いから安くしてくれ」と伝えたところで、競合による価格競争もないのに値引き交渉に応じる必要性を感じません。ゆえに賃借人側の期待するような大幅な値下げは難しいと言えます。

以上のことから、原状回復の値下げ交渉を行うには、賃借人に対しての第三者的な適正判断ができる人材の存在が必要です。

専門知識が豊富な第三者(賃借人の中に、そういった知識の豊富な方)がいれば、請求された見積書が適正なのかを判断することができます。
その上で、ビルオーナー及び指定業者と交渉することが重要です。

誤った見積りでビルオーナーとの交渉が決裂すると、時間だけが過ぎ原状回復工事が約束の期日までにできないという結果になり、明渡し遅延損害金の対象になります。

また、場合によっては貸主側が値引き要求に回答せず、明渡し遅延損害金の対象となり法廷闘争になるケースも多いため、値下げ交渉は慎重に行う必要があるのです。

見積書、賃貸借契約書、原状回復特約の再確認

オフィスや店舗の原状回復費の見積りを理解するには専門知識が必要となりますが、値下げ交渉を行う前に最低限以下の項目は事前チェックしてみましょう。

  1. 賃貸借契約書をよく見直し、特約に記載していることなどを確認する。
  2. 不明確なものは、ビルオーナーもしくは、指定業者に質問する。
  3. 不必要な工事や自然損耗範囲まで、原状回復の請求がされていないか?
  4. 人件費等、高すぎないか?

専門的な質疑をビル―オーナーにあげる時は原状回復の専門家に同席をお願いしましょう。

入居時の契約と入居後のビルオーナーとの関係性が大切

入居時の契約と入居後のビルオーナーとの関係性が大切

オフィスや店舗などの原状回復と住居目的の賃貸における原状回復とは同じ条件ではありません。

なぜなら、住居目的の賃貸の場合は、消費者契約法という法律が成立しているからです。消費者契約法は平成12年5月12月に消費者と業者との力関係が不平等であるということから作られた法律です。

ここでは詳しくお話しませんが、事業目的のオフィスや店舗などの原状回復の場合、住居目的の一般的賃貸と違い、その賃貸物件への人の出入りなども多いため、通常損耗や経年劣化の予測が立たず、原状回復の対象となる場合が多いです。

改正民法では工事範囲、工事内容を明文化した原状回復特約が賃貸契約とセットになっています。それを履行することが原状回復義務となります。(改正民法第621条)

従って、入居時における契約においては、賃貸契約や付随する特約をしっかりとチェックして下さい。その物件ごとに原状回復内容は違います。最初から通常損耗、特別損耗を十分確認しておく必要があります。

入居後においては、社員の皆さんにも日々丁寧な利用の心がけに努めてもらうよう日頃の気遣いを大切にしておくことが、値引き交渉をせずとも無駄な費用がかからずスムーズな退去ができる秘訣です。

ポイント

  • 賃料を滞納することなくしっかり払う
  • ビルオーナーとの友好な関係性
  • 賃貸物件を大切に使うこと

ADVICE ON ONE POINT

萩原 大巳

ワンポイントアドバイス

原状回復の協議はエビデンスに基づき真摯に協議しましょう。そして明渡し期日は厳守して下さい。

協議のエビデンスは原状回復適正査定が基準です。


原状回復専門的判断が必要な場合は、弊社にお気軽にご連絡ください。無料相談を承っております。