ショッピングセンターの原状回復費用が8,320万円|「退去できないかもしれない」と感じた見積査定事例

ショッピングセンターの原状回復費用を適正査定した事例。当初見積8,320万円、最終合意額6,000万円(いずれも税込概算)

事例概要

項目内容
クライアントサービス業A社
建物用途東京都江東区の大型ショッピングセンター
契約面積約252坪
当初見積金額約8,320万円
最終合意額約6,000万円
最終合意額の当初見積比約72.1%
3ACの査定内容見積査定、B工事・C工事区分の整理

※表中の金額は、すべて税込の概算です。

ショッピングセンターからの退店にあたり、貸主側の指定業者から提示された原状回復費用は、約8,320万円(税込概算)でした。
対象面積は約252坪で、坪単価にすると約33万円(税込概算)です。

この見積書を見たサービス業A社の役員は、思わず青ざめました。

A社は、これまでに数十店舗の出店と退店を経験しています。そのA社にとっても、今回の原状回復費用は過去の退店実績や社内想定を大きく上回る金額でした。

しかも、原状回復工事を行うのは貸主側の指定業者1社です。A社が自由に施工会社を選ぶことはできません。

「指定業者だから仕方がない」

そう言って、約8,320万円の原状回復見積を受け入れるしかないのでしょうか。

A社から相談を受けた株式会社スリーエー・コーポレーション(3AC)が見積内容を査定したところ、一部の工事項目をB工事からC工事へ分離できることになりました。

査定前査定後
指定業者が施工するB工事として見積一部の工事項目をC工事として分離
業者選定の自由がない状態A社側で施工業者を選定できる範囲を整理
当初見積金額 約8,320万円(税込概算)最終合意金額 訳6,000万円(税込概算)

その後、見積内容や工事区分について関係者間で協議が行われ、最終合意額は約6,000万円(税込概算)となりました。
ただし、約6,000万円になったからといって、A社が十分に納得したわけではありません。

私自身、B工事部分には、まだ高い金額の工事項目が残っていたと考えています。

この事例は、商業施設における指定業者制度の難しさと、原状回復工事を発注する前に見積内容を確認することの重要性が表れた案件です。

ショッピングセンターの原状回復費用にA社の役員が青ざめた

サービス業A社は、ショッピングセンターとの間で3年間の定期建物賃貸借契約を結んでいました。

契約期間の満了を前に、貸主側から契約を継続しない旨の説明があり、A社はショッピングセンターから退店することになりました。

そのとき、貸主側の指定業者から提示されたのが、原状回復工事の見積書です。

対象面積は約252坪。原状回復費用は約8,320万円(税込概算)で、坪単価にすると約33万円(税込概算)でした。

この見積書を見たA社の役員は、思わず青ざめました。

A社は、これまでに数十店舗の出店と退店を経験しています。その経験から、原状回復費用は坪当たり5万円程度、高くても10万円程度と想定していました。

ところが、今回提示されたのは坪当たり約33万円です。

A社の過去の実績や社内想定と比べると、約3倍から6倍に当たる金額でした。

契約期間が満了すれば、A社は退店しなければなりません。

そのうえ、追い打ちをかけるように、8,000万円を超える原状回復費用を提示されたのです。

「これでは、ショッピングセンターから退去できないかもしれない」

それほど大きな金額でした。

出店するときの費用だけでなく、退店時にこれほど高額な原状回復費用がかかるのであれば、今後の出店そのものをためらうことにもなりかねません。

原状回復費用は、単なる退去時の工事費ではありません。企業の出退店計画や経営にも影響する問題です。

商業施設の原状回復工事で指定業者を替えられない

今回の原状回復工事では、施工業者が貸主側によって指定されていました。

貸主側からは、賃貸借契約やショッピングセンターの工事ルールで決まっていると説明され、A社が施工業者を自由に選ぶことはできませんでした。

指定業者は、貸主側が指定した1社だけです。

ほかの工事会社から相見積もりを取ったとしても、その工事会社へ発注できるわけではありません。

これでは競争原理が働きにくく、原状回復費用を比較することも難しくなります。

もちろん、ショッピングセンターの原状回復工事には、夜間工事や資材の搬出入、安全管理など、施設独自の制約があります。

こうした条件を一つひとつ守る必要があるため、一般的な店舗工事より工事単価が高くなることはあります。

指定業者制度にも、施設の設備や独自の工事ルールを理解した施工会社が工事を行うことで、安全性や工事品質を維持できるという利点があります。

ただし、施工条件が厳しいからといって、見積書に記載されているすべての数量や単価が、そのまま妥当だとは限りません。

今回、指定業者側からは、約8,320万円という見積金額について、ショッピングセンターの工事条件を考えれば安い金額であるという趣旨の説明がありました。

しかし、A社としては、なぜ約8,320万円になるのか、その根拠を十分に確認できませんでした。

指定業者を替えられない。

相見積もりを取っても、別の工事会社へ発注できない。

見積金額の根拠も、テナント側だけでは判断できない。

A社にとって、非常にハードルの高い退店になってしまいました。

指定業者1社の原状回復見積では価格を比較しにくい

私はこれまで、多くのオフィスや店舗の原状回復工事見積を見てきました。

その現場で繰り返し感じるのが、貸主側の指定業者1社だけで工事内容や金額が決まる場合、競争原理が働きにくいということです。

貸主側から、

「賃貸借契約書に書いてあります」

「このショッピングセンターでは、このように決まっています」

「指定業者でなければ工事はできません」

と説明されれば、テナント側がそれ以上踏み込むのは簡単ではありません。

工事の専門知識がなければ、見積書に記載された工事項目、数量、単価が妥当なのかも判断できません。

同じタイルカーペット工事でも、材料や施工条件によって単価は変わります。

工事会社、ゼネコン、デベロッパーによって、設定される単価や諸経費にも違いがあります。

単価が違うこと自体が問題なのではありません。

重要なのは、なぜその単価になっているのかを、工事内容や施工条件に基づいて説明できることです。

資材費や人件費が上昇しているのであれば、どの工事項目に、どの程度影響しているのか。

数量が多いのであれば、どの範囲を、どのような根拠で計上しているのか。

テナント側が原状回復費用を判断するためには、金額だけでなく、工事範囲、数量、単価、施工条件などの客観的な根拠が必要です。

まだ使用できる床材や設備まで一律に交換・撤去すれば、原状回復費用が高くなるだけでなく、廃棄物の増加にもつながります。

契約上、交換や撤去が必要な工事はあります。

しかし、「何でもすべて新品に戻す必要があるのか」という点については、契約内容や原状回復範囲と照らし合わせ、工事項目ごとに確認する必要があります。

3ACが商業施設の原状回復工事見積を適正査定

A社は、自社だけで約8,320万円の見積内容を判断することは難しいと考え、店舗や商業施設の原状回復費用に詳しい3ACへ相談しました。

3ACでは、A社から提供された賃貸借契約書、原状回復に関する契約条件、工事区分表、図面、原状回復工事見積書などを確認しました。

そのうえで、次の項目を一つずつ査定しました。

  • 原状回復工事の対象範囲
  • 見積書に記載された工事項目
  • 各工事項目の数量と単価
  • ショッピングセンター独自の施工条件
  • B工事とC工事の区分
  • 指定業者による施工が必要な範囲
  • テナント側で施工会社を選定できる可能性がある範囲

見積査定は、単に「高い」「安い」と評価する作業ではありません。

工事範囲、数量、単価、施工条件を一つずつ確認し、企業が見積金額を判断するための客観的な材料を整理する作業です。

3ACでは、原状回復工事見積を技術・積算面から査定し、A社の判断材料となる査定資料を作成しました。

その後、見積内容や工事区分について関係者間で協議が行われ、一部の工事項目がB工事からC工事へ分離されました。

原状回復工事の一部をB工事からC工事へ分離

ショッピングセンターや大型商業施設では、工事がA工事、B工事、C工事に区分されています。

B工事は、テナント側が費用を負担し、貸主側が指定した施工業者が行う工事です。

C工事は、テナント側が費用を負担し、施設側の承認や工事ルールのもとで、テナント側が施工会社を選定する工事です。

今回、指定業者が施工するB工事の中に、C工事として分離できる工事項目がないかを確認しました。

その結果、一部の工事項目をB工事からC工事へ分離できることになりました。

ただし、すべてのB工事をC工事へ変更できたわけではありません。

建物全体の設備や安全性に関わる工事などは、貸主側の指定業者による施工が必要になる場合があります。

B工事だから仕方がないと一括して判断するのではなく、工事項目ごとに区分と施工条件を確認することが重要です。

ショッピングセンター内のサービス業店舗における原状回復工事前の内装
原状回復工事見積の査定対象となったショッピングセンター内の区画

原状回復費用は8,320万円から6,000万円で最終合意

3ACによる見積査定とB工事・C工事区分の確認後、関係者間で協議が行われました。

その結果、当初、約8,320万円(税込概算)だった原状回復費用は、約6,000万円(税込概算)で最終合意に至りました。

当初見積との差額は、約2,320万円(税込概算)。

最終合意額は、当初見積額の約72.1%です。

項目内容
契約面積約252坪
当初見積金額約8,320万円
当初坪単価約33.0万円/坪
最終合意額約6,000万円
合意後の坪単価約23.8万円/坪
当初見積との差額約2,320万円
最終合意額の当初見積比約72.1%

※表中の金額は、すべて税込の概算です。

しかし、ここで誤解してほしくないことがあります。

当初見積から約2,320万円の差額が生じたからといって、A社が約6,000万円(税込概算)という最終合意額に、十分納得していたわけではありません。

私自身は、B工事部分には、なお精査の余地が残っていたと考えています。

指定業者を替えることができず、競争原理が働きにくいショッピングセンターでは、見積内容を査定しても、すべての工事項目がテナント側の納得できる水準まで見直されるとは限りません。

これが、指定業者による原状回復工事の現実です。

それでも、約8,320万円(税込概算)の見積書を確認せず、そのまま発注するのと、工事項目を一つずつ査定し、B工事とC工事の区分を整理したうえで判断するのとでは、大きな違いがあります。

原状回復見積の査定は、単に金額を下げることだけが目的ではありません。

何に、いくらかかっているのか。

なぜ、その工事が必要なのか。

どこまでが指定業者による工事なのか。

企業がこうした判断材料を持ち、見積内容を理解したうえで発注の可否を検討できる状態をつくることに、査定の大きな意味があります。

「ショッピングセンターだから、高くても仕方がない」

「指定業者だから、変更できない」

そう考えて工事を発注する前に、まずは見積書の中身を確認する。

これが、商業施設から退店する企業にとって重要な第一歩です。

商業施設の原状回復事例|賃貸条件と見積査定結果

項目内容
賃借人サービス業A社
賃借人アドバイザー株式会社スリーエー・コーポレーション
賃貸人大手不動産会社
貸主側管理会社大手不動産管理会社
見積作成業者貸主側指定業者
建物ショッピングセンター
契約形態3年間の定期建物賃貸借契約
契約面積約252坪

※企業名、建物名および関係会社名は匿名化しています。
※金額はすべて税込の概算です。端数処理の関係で、坪単価や比率の計算結果が一致しない場合があります。
※本事例は個別案件の実績です。契約内容、原状回復範囲、施工条件などは案件ごとに異なり、同様の結果を保証するものではありません。

ショッピングセンター・商業施設の原状回復見積でお困りではありませんか?

ショッピングセンターや商業施設の原状回復工事では、指定業者、夜間工事、搬出入制限、B工事・C工事など、さまざまな条件によって見積内容が複雑になります。

指定業者から見積書が提示されたものの、

  • 見積金額の根拠を判断できない
  • 過去の退店案件と比べて坪単価が大幅に高い
  • B工事とC工事の区分が分からない
  • 社内稟議に使用できる判断資料が必要
  • 貸主側との関係を保ちながら見積内容を確認したい
  • 退去期限が迫っている

という場合は、原状回復工事を発注する前にご相談ください。

3ACでは、原状回復工事の範囲、工事項目、数量、単価、施工条件、B工事・C工事区分を技術・積算面から査定し、企業が原状回復費用を判断するための資料を作成します。

工事の発注後や着工後では、見積内容の確認や関係者間での協議に使える時間が限られる場合があります。

指定業者から見積書が提示された段階で、早めにご相談ください。

関連サービス:

商業施設の原状回復費用に関するよくある質問

指定業者が決まっていても、原状回復見積を査定できますか?

はい。指定業者を変更できない場合でも、工事範囲、数量、単価、施工条件、B工事・C工事区分などを技術・積算面から確認できます。

指定業者を変更できるかどうかは、賃貸借契約や施設の工事ルールによって異なります。

原状回復工事のB工事をC工事へ変更できますか?

すべてのB工事をC工事へ変更できるわけではありません。

契約内容、工事区分表、対象設備、施設側の工事ルールなどによって異なるため、工事項目ごとの確認が必要です。

商業施設の原状回復見積はいつ相談すればよいですか?

指定業者から見積書が提示された後、原状回復工事を発注する前の段階が適しています。

退去期限や着工日が迫ると、確認や協議に使える時間が限られる場合があります。

原状回復費用の査定にはどのような資料が必要ですか?

主に、賃貸借契約書、原状回復に関する契約条件、指定業者の見積書、工事区分表、図面、入居時の資料や写真などを確認します。

資料がすべてそろっていない場合でも、現在お持ちの資料でご相談いただけます。

見積査定を依頼すれば、必ず原状回復費用が見直されますか?

いいえ。

契約内容、原状回復範囲、施工条件、見積内容などは案件ごとに異なるため、金額の見直しや同様の結果を保証するものではありません。

3ACでは、見積内容を技術・積算面から査定し、依頼企業が判断するための根拠を整理します。

契約解釈や法律上の判断が必要な場合も対応できますか?

3ACは、原状回復工事やB工事について、技術・積算面から見積内容を査定します。

契約解釈や法律上の判断、法律事務が必要な場合は、連携する弁護士が担当します。案件の内容に応じて、技術面と法律面を分け、連携しながら対応します。

※法律上の判断や法律事務が必要な場合は、連携する弁護士が担当します。