日本のシリコンバレー渋谷 オフィス原状回復でスーパーゼネコンと激突

日本のシリコンバレー渋谷 オフィス原状回復でスーパーゼネコンと激突

最後は笑顔で円満合意 原状回復工事費1,320万円、敷金返還は6,316万円
資産除去債務計上金額3,000万円とは?

国際都市東京のシリコンバレー渋谷は、コロナ禍でも人気エリアで家賃も微増しています。築浅のハイグレードビルは、オシャレで設備も環境対応していて、セキュリティも万全です。しかも共用部も充実していて大変人気です。原状回復工事費も高く、坪単価は15万円を超えます。

今回の事例は、こうしたハイグレードビルからのオフィス退去に伴う原状回復工事、敷金返還、資産除去債務の計上金額の相違の実例です。

賃借人の概要

テナント東京都渋谷区 MFビル
1階 71.3坪
3階 208.4坪
合計 279.7坪
クライアント株式会社アスマーク
用途オフィス(事務所)
敷金(預託金)9,396万円

賃貸人サイドの概要

大手金融機関 大手デベロッパーの企業がPMを務め、スーパーゼネコンが原状回復の指定業者

ビルオーナーMS信託銀行
PMMBM社
原状回復元請け業者T建設 渋谷CSセンター

原状回復費概算見積は4,500万円 資産除去債務計上金額は3,000万円

株式会社アスマーク(以下、A社)は業務拡大のため、当時2つのフロアにまたがっていたオフィスをワンフロア賃貸借によってまとめ、社内コミュニケーションの向上を目的としてオフィス移転することにしました。

東京渋谷区にあるビルで築浅だったこともあり、原状回復も高額が予想されました。A社がオーナー側に退去の意向を伝え、概算見積をしてもらうと4,500万円という回答でした。

正式見積もりの金額は4,400万円でしたが、資産除去債務計上金額は3,000万円でした。そこでA社は、オフィス移転プロジェクトのPMを担当していたV社に相談し、RCAA協会の萩原理事を紹介されました。

(※総額表示)

概算見積4,510万円
初回見積4,400万円 (工事費 坪/15.7万円)
再見積3,850万円
再々見積3,300万円
合意金額3,080万円
査定額2,860万~3,080万円
削減額 1,320万円
削減率30%(小数点第一位四捨五入)
敷金返還額6,316万円(敷金より原状回復工事費を差し引く)
資産除去債務計上金額3,000万〜3,100万円(原状回復工事費 3,080万円で合意)

RCAA協会を選んだ理由

RCAA協会を選んだ理由

A社が当協会を選んだのは以下の3つの理由からでした。

  • 査定書の信憑性が高い
  • 担当者の法的知識、経験と実績に信頼がおけること
  • 遅延損害金への対応が明確であり、改正民法に詳しく説得力があったこと

査定書の信憑性

当協会会員である株式会社スリーエー・コーポレーション(以下、3AC)が提示した原状回復の査定金額は2,860 万~3,080万円でした。

この査定書の内容は、賃貸借契約書に約されている原状回復の内容を全て網羅しており、費用積算の根拠が材料、労務、現場管理、会社経費などセグメントに分別され、国交省の労務基準単価に基づき算出されていました。

A社担当者はこうした精緻な査定書からRCAA協会は信憑性が高いと判断しました。

担当者の法的知識、経験と実績に信頼がおけること

A社のオフィス移転責任者と当協会の理事が打ち合わせした際、査定の根拠説明が非常に丁寧かつ明瞭でした。

具体的には、借地借家法、建築基準法、ビル管理法に基づいた合理的なエビデンスに立脚していること、そしてこれまでの経験も交え、A社担当者にも分かりやすく説明がされました。

原状回復費の交渉では、オーナー側とトラブルになることも少なくないと聞いていたA社担当者は、RCAA協会及び会員3ACは信頼のできる専門家チームであると評価しました。

遅延損害金への対応が明確であったこと、改正民法(原状回復・敷金)は最大の考慮要件

実は、本件は明渡し期日までの時間が厳しく、ビル側業者と折り合いがつかない場合、賃料、共益費の倍額相当額の損害金が請求されるという賃貸借契約内容でした。したがって、明渡し遅延の対応をどうするかは大きなリスクを伴っていたのです。

エビデンスを提示し交渉を行っても、オーナー側の回答の遅れ、無回答などをA社は心配していました。しかし当協会では、そうした場合は損害金の対象にならず、心配は皆無であると説明しました。その裏付けとして、東京地裁、大阪地裁の判例も提示しました。

また、「改正民法の原状回復の定義範囲工事内容の明文化、改正民法敷金の目的、返還時期の明文化を考慮します」というエビデンスを指定業社に提出することによって、回答遅れによる損害金については貸主の社会的信用を失墜させ法務根拠もないと説明しました。

RCAA協会は「業務受託後に万が一損害金が発生した場合、全て協会サイドが補填する」という文面をアドバイザリー契約書に記しました。 こうしてA社は懸念されていたリスクに対しても安心することができたわけです。

協議の経過とポイント

実際の原状回復費はどうなったのか?費用の返還と合意

協会会員3ACの萩原です。今回提出した査定額は2,860万円〜3,080万円と、概算見積もりからおよそ1,400万円も減額が可能という判断でした。

では、A社の実際の原状回復費はどうなったのでしょうか。経緯を順番に見ていきましょう。

本件の原状回復は、賃貸借契約書に約されている原状変更工事(入居工事)、明渡し(原状回復工事)もすべてビルオーナーの指定以外施工不可という厳しい契約でした。 また築浅のハイグレードビルのため、当然原状回復費用は高く、特に電気・その他設備工事が割高でした。

Aグレード、スーパーグレードとも呼ばれるハイグレードビルは、ビル管理、共用部、デザインなど全てが充実し、使い勝手も良く、ビル管理においても申し分がありません。しかし問題は、原状回復工事におけるB工事の高額費用と復旧方法が不透明なことでした。

例えば、ハイグレードビルはインテリジェント化しており、全ての電気、防災、空調、その他設備が中央管理室とネットワークで繋がっています。また自動制御(セーフオートメーション)しているため、工事は貸室内にとどまらず、中央管理室の工事及びデータ書替えなどのソフト工事も発生します。このため、費用が極めて高額になるわけです。したがって、多少知識がある程度では見積もりの分析が難しいです。 こうした事実を、多くのテナント側の移転工事PM企業も理解していません。結果としてプロでも見積内容の分析が難しいという状況になっているのです。

当協会及び3ACでは、こうした状況にも対応できるノウハウと経験があります。 このほか、労務単価を国交省指導の基準単価に値引きさせるといった算出を行います。こういったことにより、本案件のB工事においては約40%の値引きが可能でした。

こうしたエビデンスを使って再々見積もりを依頼したところ、3,300万円という金額が提示されました。 初回見積もりが4,400万円だったので、あと一歩で資産除去債務計上金額は3,000万円です。

そこで、さらに原状回復の面積をチェックし、テナント所有の建築物(C工事解体)はテナント側業社で実施することになり、結果、目標ターゲットブライス3,000万円までは届かなかったものの、3,080万円で円満合意することができました。

当該ビル付近のエリアは人気の立地のハイグレードビルです。しかし、工事費が割高であることの資料(エビデンス)を提示した結果、3,080万円という金額提示までこぎつけたのです。 紛争も辞さない姿勢を貫けば、さらに200~300万の値下げをすることも可能でしたが、当初よりA社の意向として、紛争まではしないという方針だったので3,080万円で笑顔の円満合意としました。敷金返還確定は、敷金より原状回復工事費を差引き、6,316万円の三方よしとなりました。

執筆者・本件担当アドバイザー

萩原大巳

萩原 大巳(はぎわら ひろみ)

一般社団法人RCAA協会 理事
【協会会員】株式会社スリーエー・コーポレーション 代表取締役CEO
• ワークプレイスストラテジスト
• ファシリティプロジェクトマネージャー

クライアントからいただいたコメント

専門技術が高く、法律事務があり大変な協議だったと思いますが、1,220万円の値下げをしていただき、何とか資産除去債務計上金額以内で合意でき、実行予算以内で納まりました。本当にありがとうございました。

(株式会社アスマークのオフィス移転責任者 社長室長 F様)

まとめ

ハイグレードビルでは原状回復費が必然的に高額になります。しかし、大半の案件では原状回復適正査定を行えば、費用をミエルカし、エビデンスがあれば、値下げは可能であるといえるでしょう。原状回復費が高額な分、値下げ額も大きくなります。

原状回復工事適正査定のご相談を承ります。

おすすめ動画・コラム