原状回復工事費は何でこんなに高いの?相場はあるの?

原状回復工事費は何でこんなに高いのか?相場はあるの?

萩原「原状回復・敷金」裏を語る

民主主義国家は、経済との両立でwithコロナ政策に舵を切りました。コロナパンデミックスは、CX(コーポレートトランスフォーメーション)やDXを進展させ、リモートワークを普及させ、ライフワークスタイルを激変させました。我国においてもローカル経済(以下、L)を直撃し、日本経済の本丸である中小個人経営企業413万社の負債はコロナ前の3倍になりました。ここがCX、DXに挑戦し生産性を向上させないと日本経済の未来は暗いです。

会社、事業を丸ごと創り変えるCXは業態変化、事業再構築です。その最大の障壁が原状回復工事費高騰問題と移転先B工事費高騰問題、高額な預託金(敷金)です。その原因はビルに紐付けされた指定業者制度なのです。

本コラムでは原状回復工事費が高い理由と原状回復工事費相場について分かりやすく解説します。

原状回復工事費はビルのグレードと規模、ビルごとの原状回復特約により工事費が15倍違う

下記は、オフィスにおける指定業者工事の平均原状回復工事費です。

床、壁の全面貼り替え、天井の前面吹き付け塗装など、通常損耗を全て借主に負担させる原状回復工事費になっています。

原状回復工事費 坪単価(総額表示)

小規模(50坪未満)27,500円〜55,000円/坪
中規模(50坪以上100坪未満)38,500円〜82,500円/坪
大型ビル(100坪以上)77,000円〜132,000円/坪
超大型ビル(300坪以上)110,000円〜187,000円/坪
スーパープレミアムビル(新築・築浅のハイグレード超大型複合ビル)132,000円〜440,000円/坪

※ RCAA協会原状回復適正査定の平均値 2021年調査まとめ

オフィスの原状回復工事費、相場は27,500円〜440,000円/坪 そのワケとは?

オフィスの原状回復工事費、相場は坪/27,500円〜440,000円 そのワケとは?

①ビルのグレードと規模、ハイグレードビルほど高額

ハイグレードビルは、基準階の電気・空調・換気・防災・セキュリティ、その他設備を自動制御(ネットワーク)しており、その移設、増設、除去の費用は驚くほど高額です。

入居の際、テナントの要望で発生したB工事(原状変更)を借りた時の状態に復旧する工事です。ハイグレードビルほどテナントが多数入居しているため、施工上の制約条件が厳しいのも高額の原因です。

建築資材も特注品が多く、森ビル仕様、三菱仕様など、高品質の資材を使用しているケースがよく見受けられます。

②デザイン性の高いこだわりの内装(原状変更・入居工事)

経営者は、働き方をデザインして生産性向上のためのワークプレイスを提供します。その上環境に優しく人が主役のオフィスは独創的であり工事費は高額になります。そのオフィスを原状回復特約に基づき原状回復しますので、自ずと原状回復費も高額となります。

③ビル側業者・貸主・PM・BM・指定業者が大企業であるほど原状回復工事費は高額

例えば、貸主が三菱地所、AM・PM・BMも系列会社、指定業者はビルを建てたスーパーゼネコン、と日本を代表する会社が元請一次下請け、二次下請け、三次下請け、四次下請けという重層請負構造となり、この構造は貸主サイドではビル運営のルールとして決まっています。当然コストが積み上がります。

④高額な預託金(敷金)は月額賃料の12カ月分、管理費も6,000円/㎡は当たり前(ハイグレードビル)

清掃は行き届き、安全管理も設備も至れり尽くせりで充実しています。家賃も管理費も高額です。

原状回復が高くとも敷金より差し引けば賃貸人サイドはそれで済みます。入居工事は設計施工を指定として完全に囲い込みします。入居工事が高いと交渉すれば、「オープンが遅れますよ」と言われ、強気にあらがい賃貸借契約を解約しても敷金は押収となります。ビル側は回収リスクもなく指定業者制度により競争原理が働きません。

⑤ビル全体の自動制御(ネットワーク)と建築資材の特注品によりビル側業者以外施工ができない仕組み

ビル全体のネットワークに関わるため、貸し室以外のネットワークの内容を把握できません。また特注品であるために資材の購入がビル側以外に不可能です。完全な囲い込み独占的地位です。

① ~⑤は完璧な囲い込みの仕組みですが、「競争優位から独占に」この対抗策を伝授します。

それは「原状回復・B工事適正査定」です。

改正民法では、原状回復の情報開示と説明責任、工事内容の明文化により、借主に理解させることは貸主責任であるとなりました。これを法務根拠として原状回復もB工事も「全てミエルカ」が可能となりました。

敷金についても、「借主の家賃やその他債務の債務不履行を担保とする目的」と定義されました。

これらを応用すれば、「原状回復義務不履行のため敷金は返還できない」という圧力を回避することが可能となりました。貸主サイドが主張する原状回復工事費を敷金から差し引いて残金を返還して下さい、と言えばいいのです。(原状回復費見合い負担金清算)

店舗の原状回復 スケルトン戻しの原状回復工事費について

店舗の原状回復 スケルトン戻しの原状回復工事費について

店舗や飲食店は、全ての内装工事に対して水回り・厨房設備の費用で4割を超えます。入居工事(原状変更)では工事区分によりB工事が発生します。これを元のスケルトンに戻す工事が原状回復です。

ショッピングセンターやシヨビングモール等、多店舗が入居している場合、仮囲い、夜中23:00から翌朝7:00まで工事可能など施工条件が厳しいです。解体資材、建材の搬出、搬入の養生ルート、警備員までビル運営のルールで厳格に取り決めされています。

このような事情からB・C工事(解体工事)にかかる費用は165,000円〜770,000円/坪となります。

特に土間のハツリ(A工事)などがある時は高額となります。厨房設備は買取り業者もありますし、電気・空調・換気・防災、その他設備が省エネの環境対応型であればオーナー承諾の上残置も可能です。

信頼のできる原状回復・B工事査定会社に現地を見てもらい相談して下さい。

特に有名なホテルの地下ショッピングモールの原状回復工事費は極めて高額です。注意して下さい。

執筆者 萩原 大巳が原状回復問題を摩擦覚悟で語ります

大手デベロッパーもスーパーゼネコンも、SDGsや環境に優しいGX(グリーントランスフォーメーシヨン)など理想を言ってはいますが、結局のところ囲い込み戦略の指定による原状回復工事というスクラップ&ビルドです。

競争原理を回避して、儲けられるところから儲ける、敷金で工事費を回収、独裁国家中国にさえ原状回復や高額な預託金(敷金)ありません。

しかし、改正民法で公正に一歩近づきました。世界を見て知って東京に世界のユニコーン企業、ビックテック企業がアジアのヘッドオフィスを日本に開設するグローバルスタンダードな借地借家法が必要です。

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