【改正民法を考察】敷金・敷金返還・敷金勘定科目

【改正民法を考察】 敷金・敷金返還・敷金勘定科目

萩原「原状回復・敷金」裏を語る

経済には国境はありません。通信テクノロジーは瞬時に時空を超えて国境を超えます。

東証銘柄の株式取引の7割は外資、株式保有の3割超も外資といわれています。不動産取引の5割(10億以上)も外資です。

今回のコラムは、賃貸借における預託金(敷金・デポジット)、敷金返還、敷金勘定科目までを分かりやすくシンプルに解説します。

【改正民法】敷金の定義・目的の明文化とは?

改正民法 敷金の定義・目的の明文化とは?

2020年4月より120年ぶりに民法が改正されました。敷金については、第622条2第1項で、「敷金とはいかなる名目によるかを問わず、賃料債務、その他賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する債務不履行を担保する為の預託金」と敷金の定義と目的を明文化しました。

また、賃借人が賃貸人に対して全ての債務を履行したのちは敷金の返還時期の明文化を全て賃貸人の責任であると位置付けました。

改正民法の解釈によると、保証金も敷金と同じ意味となります。関西エリアでよく見受けられる礼金は賃貸人に物件を貸してもらうお礼と解釈できます。従って、賃貸人は礼金の返還義務はありません。 

2020年4月以前の賃貸借契約でよく見受けられる敷金の償却費用です。債務不履行を担保とする預託金となりますのでトラブルになるケースが多いと予想されます。

賃貸借契約更新の際は、「改正民法を適用する」と特記事項に書き入れることをお勧めします。

敷金返還時期の明文化とは?

日本の賃貸借契約には日本独自に進化した「原状回復義務」が記されています。それも通常損耗まで100%借主に負担させる原状回復特約により、事業用不動産は床・壁・天井を新しく更新する特約です。

天井に取り付けられた電気・空調・防災・その他設備(B工事)として、元あった位置に移設・増設・除去をして原状回復します。インテリジェントビルではネットワークのため中央管理室の工事、データの書き換えのソフトまで原状回復義務となります。

これが原状回復義務なのか紛争が予想されます。

現在は、この原状回復義務を履行しないと敷金返還の権利が確定されません。改正民法第621条により、原状回復の定義・範囲・工事内容の明文化は賃貸人の責任となりました。この原状回復義務を履行したのち敷金がいつ・いくら返還されるか明文化して借主に理解させる事は賃貸人の責任となりました。

敷金の勘定科目と会計処理について

事業用不動産賃貸でも、社宅や寮などの会計処理では敷金(保証金)、家賃、管理費、礼金、仲介手数料などの支払いが発生します。敷金は借主の債務不履行を担保するための預託金です。会計処理は現金預金と同じ扱いになります。先に述べたように礼金は貸主に対するお礼の意味なので、退去の際返金されることはありません。

家賃も管理費も礼金も借り方の勘定科目で「地代家賃」として計上します。礼金が20万以上の場合は、勘定科目を「長期前払い費用」として5年で均等に償却するのが一般的です。礼金は現在の賃貸借契約では殆どありません。真摯に話し合い、礼金ゼロで賃貸借契約を締結して下さい。

仲介手数料は勘定科目では「支払い手数料」となります。事業用不動産を退去する際、居抜きで退去して原状回復義務がなくなるケースにおいては、ADやコンサルFeeやアドバイザリーFeeなど、呼び名のいかんに関わらず、これらも「支払い手数料」となります。

敷金の償却については中小ビルの一部で見受けられます。 しかし、こちらはなくなりつつあります。中小ビルの賃貸借契約において実質家賃の意味合いです。本来、敷金は債務不履行を担保することが目的なので、担保金の償却は問題ある契約です。真摯に協議し、敷金償却の項目は削除するよう依頼して下さい。敷金の償却が賃貸借契約で約されている場合、20万円未満は支払い手数料で単年度で一括処理、20万円以上の場合は返還される敷金を「差入れ保証金(敷金)」として会計処理し、償却費は支払い手数料として会計処理します。

敷金の勘定科目と会計処理について

原状回復工事費の敷引きとは?

これは、古くからある日本の賃貸借契約に伴う原状回復義務の慣例です。原状回復工事費を敷金から差引き返還することです。

ビルに紐付けされた指定業者による高額な原状回復工事費の回収を目的とした指定業者制度、高額な敷金という預託金制度は悪しき慣例です。先進7カ国の賃貸借契約には高額な預託金(デポジット)や、ビルに紐付けされた指定業者制度などありません。

執筆者 萩原 大巳「日本の賃貸借契約の問題と未来を語る」

経済がグローバルリズムにより国境を超えた現在、インド・アジア太平洋の成長を取り込むことは日本の経済成長に直結します。アジアのハブ、世界のビックテックカンパニー、ユニコーンを日本に誘致することです。

2030年には、世界のGDPの6割はアジアと言われる今こそ、賃貸借契約もグローバルスタンダードに変革する時期です。会計基準はIFRS(国際会計基準)、個人情報保護、GDPR、環境保護はSDGs、投資適格基準はESGがスタンダードになりました。グローバル企業は国際会計基準により資産除去債務で原状回復工事費、入居工事(B工事)、預託金である敷金(デポジット)まで会計処理します。

日本会計基準も同等となりました。 指定業者制度による高額な原状回復・B工事費、工事費の回収を目的とした高額な預託金(敷金制度)、代表者の連帯保証まで、これは世界に類を見ない悪しき慣例です。そろそろ日本もグローバルスタンダードを基準として、ソフトローの国家を目指して変化対応する時期です。

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