【第10回】通常損耗を含めた原状回復義務の特約Ⅵ ~東京地裁平成25年3月28日判決(D1-Law.com)~

教えて!横粂先生

オフィスの原状回復特約通常損耗借主負担は有効‼︎

国土交通省は、居住用物件の賃貸借契約終了時における原状回復義務について、国土交通省 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公表しています。

このガイドラインには法的拘束力こそありませんが、一つの判断の指針とはなっています。では、オフィス用賃貸借契約の事案で、ガイドラインが判断に影響を与えることがあるのでしょうか。一つの裁判例をみてみましょう。

タイトルに挙げた裁判例では、原状回復特約の範囲の解釈において「被告は、本件ガイドラインは本件賃貸借契約には適用されない旨主張し、同旨の裁判例(東京高等裁判所平成12年12月27日判決)が存在する旨指摘する。しかしながら、同裁判例は、賃貸借契約書に『本契約締結時の原状に回復しなければならない』と明記されていた事案についてのものであり、本件と事案を異にする。本件ガイドラインは、民間賃貸住宅の賃貸借契約を念頭に置いたものであるが、本件賃貸借契約における原状回復の内容として『借主の特別な使用方法に伴う変更・毀損・故障・損耗を修復し、貸室を原状に回復』する旨定めていることからすると、通常の使用をした場合の経年劣化に基づく損耗は原状回復義務に含まれないと定めたものと解され、これと同様の解釈に基づいて定められている本件ガイドラインの内容自体は、本件賃貸借契約(筆者注:オフィスビルの賃貸借契約)についても妥当するものであると認められる。」と判示しています。

この裁判例では、オフィスビルの賃貸借契約の場合であっても、明確に通常損耗までの原状回復を約束しない限りは、借主が通常損耗の修繕費用を負担する義務はないとしており、第9のテーマでお話した裁判例とは事案が異なるとし、貸主の主張を退けています。

裁判例はガイドラインそのものや、それらの適用範囲の問題よりも、「貸主と借主が契約時にどういった合意をしていたのか」という点をより重視しているものと思われますので、ガイドラインが結果に与える影響は相対的に低いものといえるのではないでしょうか。

ADVICE ON ONE POINT

ワンポイントアドバイス

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」そのものよりも、契約当事者の合意内容がどういうものであったのかといった点の方が重要視されます。事業用賃貸の原状回復義務は、それぞれの貸主で原状回復義務は違います。「原状回復をめぐる住宅のガイドライン」は考慮要素の一つであると考えられます。

【解説】オフィス原状回復義務の特約の有効性

萩原

「原状回復・B工事」適正査定のパイオニアよりアドバイス

国際都市東京がアジアのヘッドオフィスに選ばれる政策とは?

貸主が借主の事業運営上の使用による損耗を予測する事は、現実的に不可能である。損耗を予測して家賃に反映させた場合、賃料増額の大きな原因となりやすい。商習慣、市場原理、経済合理性を考慮すると、契約締結時の「原状」と定め、原状回復特約により通常損耗負担を借主負担とする事は有効であるとの考えである。

先進国の国際都市は、原状回復義務というのがなく、共産主義国家の中国でも見受けられない。賃貸契約締結入居工事「原状変更」を当事者にそれぞれ専任代理人が委任され、内装工事まで貸主が実施するケースが多い。スケルトンの建物家賃と内装工事費見合いの第二家賃として賃貸契約期間を定め、徴収するのが慣例となっている。

賃料は市場原理に大きく影響され家賃の高騰の原因になりやすい。しかるに移転元の原状回復、移転先のB工事の指定業者による工事費高騰問題はスクラップ&ビルドであり、リユースリサイクルを実施し、地球環境に優しいGX(グリーントランスフォーメーション)を考慮すれば、借地借家法おける原状回復義務、B工事の全面指定、敷金(デポジット)、敷金返還請求権、資産除去債務まで国際法に近づける時期に来ています。

グローバルスタンダードを考慮して、世界のユニコーン480社が日本の国際都市東京にアジアのヘッドオフィスを誘致しやすいフェアーな借地借家法にする必要があります。

「世界の成長企業を東京に」

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