原状回復はビルごとに異なる!賢いテナントが知っておくべき工事の実態

原状回復はビルごとに異なる!賢いテナントが知っておくべき工事の実態

オフィスの退去時には、原状回復費が大きなコストとなることがあります。原状回復工事の範囲を適切に見極めることは、余分な費用を抑えるために重要です。特に、賃貸借契約書に基づく工事範囲を正確に理解していない場合、不要な工事や高額な見積もりを受けることもあります。本記事では、実際の事例をもとに、原状回復費の減額方法と、指定業者による見積もりに対する注意点を解説します。

原状回復工事とは?オフィス移転時に知っておくべき基礎知識

原状回復工事とは、オフィスを退去する際に、入居前の状態に戻すための工事を指します。一般的には、床や壁の張り替えや塗り替え、設備の修繕などが含まれますが、すべての原状回復工事がテナントの負担になるわけではありません。

テナントが負担すべき範囲は、賃貸借契約書に明記されています。例えば、入居時に行った内装の変更があれば、その部分の原状回復が必要となります。しかし、入居時から既に存在していた設備や内装に関しては、テナントが負担する必要がない場合もあります。特に、床の全面張替えや壁天井の全面塗り替えは、ビル側の指定業者によって高額な見積もりが提出されることが多いため、慎重に確認することが求められます。

テナントが負担すべき原状回復工事の範囲を正確に理解することで、不要な工事や高額な費用を避けることができます。賃貸借契約書の内容を確認し、疑問点があれば専門家に相談することが重要です。

【事例紹介】原状回復費を34.78%減額!和光エージェンシーの成功例

ここでは、実際に行われた原状回復費の減額事例として、東京都渋谷区のオフィスを利用していた株式会社和光エージェンシーのケースを紹介します。

物件詳細

項目内容
クライアント株式会社和光エージェンシー
住所東京都渋谷区 東信青山ビル
契約面積58.80坪/194.40㎡
解約日2024年8月22日
スタート金額5,060,000円
合意金額3,300,000円
削減額/削減率1,760,000円/34.78%

(全て総額表示)

和光エージェンシーは、2024年8月にオフィスの退去を控え、ビルオーナー指定業者から提出された見積もりを受け取りました。原状回復工事の見積もりには、タイルカーペットの全面張替えや、壁天井の全面塗り替えが含まれており、総額5,060,000円(税込)と非常に高額でした。

実際のオフィス室内

スリーエーコーポレーションはビル担当者に面会し、他の物件での実例や法的な観点を含め、原状回復工事の範囲を説明しました。そして、テナントが負担するべき工事のみを含めた見積もりをビル側に作成させ、その後、工事単価の査定を実施しました。その結果、当初の見積もりから34.78%の削減が実現し、テナントにとって大きなコスト削減に成功しました。

この事例からわかるように、賃貸借契約書をしっかりと確認し、原状回復工事の範囲を明確にすることが重要です。また、ビルオーナー側の指定業者が提出する見積もりには、不要な工事が含まれていることが多いため、慎重な見積もりの査定が不可欠です。

指定業者の見積もりに要注意!工事範囲の見極め方

指定業者の見積もりに要注意!工事範囲の見極め方

原状回復工事を依頼する際、ビル側が指定した業者による見積もりをそのまま受け入れてしまうケースが多く見られます。特に、オフィス退去時はタイトなスケジュールであるため、見積もりの内容を深く確認せずに契約してしまうことが少なくありません。しかし、指定業者の見積もりには、不必要な工事が含まれていることがしばしばあります。

和光エージェンシーの事例でも、タイルカーペットの全面張替えや壁天井の全面塗り替えが見積もりに含まれていましたが、契約書を確認した結果、これらの工事の多くはテナントが負担する必要のないものでした。ビルオーナー側の指定業者は、原状回復の範囲を広く捉えすぎていることが多く、床や壁の全面張替えが必要だと主張するケースが多いです。

テナントが負担すべき工事範囲を適切に見極めるためには、賃貸借契約書に基づく明確な判断が重要です。また、見積もりが適正かどうかを第三者に確認してもらうことで、無駄な費用を抑えることができます。ビル指定業者の見積もりに対しては、慎重な対応が求められます。

原状回復費を抑えるための3つのポイント

原状回復費を抑えるための3つのポイント

原状回復費を減額するための主なポイントは以下の通りです。

  1. 賃貸借契約書を確認する 

   原状回復工事の範囲は、契約書に明記されています。契約内容を理解し、不要な工事を防ぐことが大切です。

  1. 見積もりの査定を行う 

   ビル指定業者の見積もりは高額になる傾向があります。第三者に査定してもらうことで、適正価格を確認しましょう。

  1. 専門家に相談する 

   賃貸借契約書や見積もりに不明点があれば、専門家に相談し、最適な解決策を見つけることがコスト減額につながります。

これらの対策を実行することで、原状回復費を大幅に抑えることが可能です。

原状回復工事で損をしないために今すぐできること

オフィス移転時に発生する原状回復工事は、テナントにとって大きな負担となります。しかし、契約内容の確認や、見積もりの査定を通じて、無駄な費用を抑えることができます。専門家に相談することで、適正な原状回復工事範囲を見極め、効率的な移転を実現しましょう。

査定者の所見

原状回復工事において、多くのビルオーナーは「どのビルでも床や壁の全面張替えや塗り替えが必要」と誤解しているケースが多々見受けられます。しかし、実際には原状回復の範囲はビルごとの賃貸借契約内容によって大きく異なります。和光エージェンシーの事例においても、賃貸借契約書を詳細に確認したところ、テナントが負担すべき範囲は非常に限定的であることが判明しました。

また、指定業者が出す見積もりには、テナントが負担しなくてもよい工事が含まれていることが多く、専門的な査定が欠かせません。今回のケースでは、スリーエーコーポレーションがビル側と交渉し、テナント負担の適正な範囲のみで見積もりを作成するよう指示。結果として、工事費用を34.78%削減することに成功しました。入居者はまず専門家に相談し、原状回復範囲を正確に見極めることで、移転にかかるコストを大幅に削減することが可能です。

執筆者・担当コンサルタント

山田 貴人

コンサルタント 山田 貴人

「中小規模オフィス・店舗専門 原状回復・敷金返還相談センター」を開設。原状回復査定員として、日々、経営者の相談に向き合っている。
YouTubeで実例解説を行い、社会に原状回復問題を発信している。