では、通常損耗までも含めた原状回復義務を定めた特約は、全て有効なのでしょうか。

賃貸人が賃借人に対し、特定優良賃貸住宅の賃貸借契約の解除及び明渡後に、敷金から通常の使用に伴う損耗(いわゆる「通常損耗」)の補修費を含む金額を特約に基づき差し引いた残額を返還したところ、賃借人が未返還の敷金及び遅延損害金の支払いを請求した事案で、最高裁判所は以下の判決の要旨のようにいっています。

(判決の要旨)
「賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約(以下「通常損耗補修特約」という。)が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である。」

大分抜粋しましたが、裁判所の考え方としては、本来は賃料に付加される形で前払いされているはずの通常損耗の補修費用を、後から賃借人から受け取るというイレギュラーな契約をするのであれば、本当に賃借人がそういった不利益を受けることに納得して特約を締結しているか厳しく判断して、特約の有効性を判断しますよといっているのです。

参考文献
判例タイムズNo.1200 127頁以下
島田佳子「建物賃貸借契約終了時における賃借人の原状回復義務について」判例タイムズNo.1217 56頁以下

ADVICE
ON ONE POINT

ワンポイントアドバイス

最高裁の根本的な考え方は、「本当に納得して契約を締結しているか否か」にあるのでしょう。不利益を受ける恐れがある賃借人には特約の内容をしっかり説明することが求められているのです。

  • 横粂 勝仁(よこくめ かつひと)

    元衆議院議員・弁護士・税理士。東京大学法学部を卒業した年に司法試験に合格し、弁護士に。「総理」というニックネームでフジテレビ系恋愛バラエティ番組『あいのり』に出演。2009年衆議院議員総選挙で、神奈川11区において小泉進次郎氏らと戦い、比例復活で初当選を果たす。2012年衆議院議員総選挙では、東京18区において無所属で菅直人氏らと戦い、落選。現在は、弁護士法人レガロで代表を務め、文化人として各メディアでも活躍中。一男一女の父で、趣味はゴルフとクイズ。

  • 石川 道啓(いしかわ みちひろ)

    弁護士(第67期)。静岡県出身。中学生時代より弁護士になることを志し、2007年立命館大学法学部を卒業後、2011年に静岡大学大学院法務研究科を終了、2013年に司法試験に合格し、約1年間の司法修習を経て2014年12月より弁護士法人レガロに入所。以来同事務所の一員として稼働し、不動産関連の案件を中心に幅広い分野の案件を受け持つ。