【第5回】通常損耗を含めた原状回復義務の特約Ⅰ ~意義~

教えて!横粂先生

原状回復特約は通常損耗を全て借主に負担させる契約書です。

これまでお話したように、少なくとも居住用建物の賃貸借契約においては、通常損耗は賃貸人の負担となるのが原則と考えられています。

しかし、賃貸人が賃料に通常損耗の修繕費を織り込もうにも、賃借人がどの程度の期間入居するのか、入居によりどの程度通常損耗が発生するのかを予測するのは困難であり、一体いくら賃料に含めておけばいいのかというのは難しい問題です。

少なすぎれば、いざ修繕というときに修繕費が足りなくなってしまいますし、多すぎれば近隣の同種の賃貸物件に比べて割高の家賃になってしまい競争力が落ちてしまいます。

そこで、賃貸人は賃貸借契約時に、通常損耗の修繕費としてかかる分を後で支払う特約を結ぶことが多いのです(特にオフィスではほとんどそうです)。この特約が有効ならば、退去後に通常損耗について負担した分を賃借人から回収すればいいので、敷金を預かっている賃貸人からすれば、無駄に賃料を上げる必要もないのです。

このような面から賃貸人には通常損耗について特約を結ぶ意義があるのです。

他方で、賃借人は退去時にいくら請求されるか分からないというリスクを負うことになってしまいます。

ADVICE ON ONE POINT

ワンポイントアドバイス

賃貸人は、新たな賃借人を早く見つけるためになるべくきれいで環境に優しい省エネ設備に交換したいと考えています。その費用を賃借人に負担してもらうために、賃貸借契約に原状回復義務の特約が盛り込まれていることが多いのです。原状回復特約を熟読して、理解してから賃貸借契約に押印してください。(注意:このケースは激増しています。法理は契約自由の原則です)

【解説】原状回復の特約を応用するしたたかな貸主、その敷金返還の方法とは?

萩原

「原状回復・B工事」適正査定のパイオニアよりアドバイス

中小商業ビルは、空室率が激増しています。5階建てビルでワンフロアー/30坪退去すれば空室率は20%です。ビルオーナーもテナントも財務が損傷しております。

賃貸契約の更新時、原状回復特約をわかりやすく説明します。

まず解約予告の相談をビルオーナーにしますと、

「原状回復指針書に捺印お願いいます。この指針書を基準として指定業者は原状回復見積を作成します」

と、紳士的に対応してくれます。

この書類に押印しますと通常損耗は全て借主負担、特別損耗は新規交換、貸主に有利になる「証」です。原状回復義務を履行して敷金返還請求権が確定し、当然原状回復費用は高額になります。「敷金保証金」の返還はできることならしたくないのが、貸主の本音です。特に更新料、敷金保証金の償却など借主に不利な事項は、削除依頼してください。敷金は英語では、デポジット「現金預金」といい、現金預金の償却など国際法ではありえません。

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