オフィスビルの賃貸借契約における原状回復の特約(「本契約が終了するときは、乙(賃借人)は賃貸借期間終了までに第八条による造作その他を本契約締結時の原状に回復しなければならない。但し、甲(賃貸人)の書面による承諾があるときは、設置した造作その他を無償で残置し、本物件を甲に明け渡すことができる。」)に基づき、賃借人が退去に当たって通常損耗分も原状回復する義務を負うか争われた事案です。

この事案で東京高等裁判所は、「本件原状回復条項は、前記のような文言自体及び造作等に関する特約の内容に照らして、造作その他の撤去にとどまらず、賃貸物件である本件建物を「本契約締結時の原状に回復」することまで要求していることが明らかであるから、被控訴人らに対し、控訴人らから本件建物を賃借した時点における原状に回復する義務を課したものと解するのが相当である。」と判示し、原状回復をする特約に基づき、通常の使用による損耗、汚損をも除去し、本件建物を賃借当時の状態にまで原状回復して返還する義務があるとしました。

この裁判例は、前述の最高裁判所第二小法廷判決平成17年12月16日より前の判断ですが、オフィスに関して賃貸人と賃借人が通常損耗まで含む原状回復特約につき、賃貸借契約書上の記載内容や造作及び諸設備の新設・撤去・変更に関する規定方法からいって、通常損耗も含めて賃借人の負担で修繕することを賃貸借契約締結時に納得のうえ了承していたと判断されたものといえ、その意味では最高裁判所第二小法廷判決平成17年12月16日の判断とは矛盾しないのではないでしょうか。

参考文献
判例タイムズNo.1095 176頁以下

ADVICE
ON ONE POINT

ワンポイントアドバイス

通常損耗も含めた原状回復義務を負うかについては、契約書の文言等から契約時に賃借人がこれを納得のうえ承諾していたと判断される場合があり、注意が必要です。

  • 横粂 勝仁(よこくめ かつひと)

    元衆議院議員・弁護士・税理士。東京大学法学部を卒業した年に司法試験に合格し、弁護士に。「総理」というニックネームでフジテレビ系恋愛バラエティ番組『あいのり』に出演。2009年衆議院議員総選挙で、神奈川11区において小泉進次郎氏らと戦い、比例復活で初当選を果たす。2012年衆議院議員総選挙では、東京18区において無所属で菅直人氏らと戦い、落選。現在は、弁護士法人レガロで代表を務め、文化人として各メディアでも活躍中。一男一女の父で、趣味はゴルフとクイズ。

  • 石川 道啓(いしかわ みちひろ)

    弁護士(第67期)。静岡県出身。中学生時代より弁護士になることを志し、2007年立命館大学法学部を卒業後、2011年に静岡大学大学院法務研究科を終了、2013年に司法試験に合格し、約1年間の司法修習を経て2014年12月より弁護士法人レガロに入所。以来同事務所の一員として稼働し、不動産関連の案件を中心に幅広い分野の案件を受け持つ。