賃借人が賃貸借契約締結後に取り付けた物ではなく、賃貸物件そのものやもともと備え付けられていた物が賃貸借契約中に劣化した場合は、誰が修繕する義務を負うのでしょうか。この点も民法には義務とは明示的に書かれていないので(民法616条、598条)、法律の解釈による他ありません。

結論から先に言うと、「ケースバイケース」ということになってしまいます。これまでの裁判所や法学者の考えの根幹は、「賃貸借契約」という契約の性質そのものから導き出されると私は理解しています。
そもそも、賃貸借契約というのは、賃貸人が賃貸物件を賃借人に使用させ、収益させることで対価(賃料)を貰う契約です。つまり、ある一定の期間、賃貸人が賃借人に賃貸物件を使わせることを当然の前提としているのです。
時間が経てば物は劣化し価値は落ちます。賃貸借契約はこのことが当然の前提なのです。したがって、裁判所や法学者は以下のように言って(いると私は思って)います。

つまり、賃貸借期間中、普通に使って劣化し価値が落ちた分(いわゆる「通常損耗」)は、賃貸人負担ということです。
この基本的な考えは、国土交通省が公表している「原状回復のトラブルとガイドライン」とも共通していると考えられますし、特に一般的な賃貸住宅では原則的な考え方だと思われます。

では、「通常損耗」がどこまでをいうのでしょうか。この点は追ってお話します。

ADVICE
ON ONE POINT

ワンポイントアドバイス

一定期間賃貸物件を貸すことが前提の賃貸借契約では、原則的には、通常損耗は賃貸人負担で修繕されるべきとされます。もっとも、オフィスの賃貸借契約では特約が結ばれていることが多く注意が必要です。

  • 横粂 勝仁(よこくめ かつひと)

    元衆議院議員・弁護士・税理士。東京大学法学部を卒業した年に司法試験に合格し、弁護士に。「総理」というニックネームでフジテレビ系恋愛バラエティ番組『あいのり』に出演。2009年衆議院議員総選挙で、神奈川11区において小泉進次郎氏らと戦い、比例復活で初当選を果たす。2012年衆議院議員総選挙では、東京18区において無所属で菅直人氏らと戦い、落選。現在は、弁護士法人レガロで代表を務め、文化人として各メディアでも活躍中。一男一女の父で、趣味はゴルフとクイズ。

  • 石川 道啓(いしかわ みちひろ)

    弁護士(第67期)。静岡県出身。中学生時代より弁護士になることを志し、2007年立命館大学法学部を卒業後、2011年に静岡大学大学院法務研究科を終了、2013年に司法試験に合格し、約1年間の司法修習を経て2014年12月より弁護士法人レガロに入所。以来同事務所の一員として稼働し、不動産関連の案件を中心に幅広い分野の案件を受け持つ。