【第2回】賃貸借契約終了時の賃借人の原状回復義務Ⅱ~毀損部分の補修~

教えて!横粂先生

賃借人が賃貸借契約締結後に取り付けた物ではなく、賃貸物件そのものやもともと備え付けられていた物が賃貸借契約中に劣化した場合は、誰が修繕する義務を負うのでしょうか。この点も民法には義務とは明示的に書かれていないので(民法616条、598条)、法律の解釈による他ありません。

結論から先に言うと、「ケースバイケース」ということになってしまいます。これまでの裁判所や法学者の考えの根幹は、「賃貸借契約」という契約の性質そのものから導き出されると私は理解しています。
そもそも、賃貸借契約というのは、賃貸人が賃貸物件を賃借人に使用させ、収益させることで対価(賃料)を貰う契約です。つまり、ある一定の期間、賃貸人が賃借人に賃貸物件を使わせることを当然の前提としているのです。
時間が経てば物は劣化し価値は落ちます。賃貸借契約はこのことが当然の前提なのです。したがって、裁判所や法学者は以下のように言って(いると私は思って)います。

つまり、賃貸借期間中、普通に使って劣化し価値が落ちた分(いわゆる「通常損耗」)は、賃貸人負担ということです。
この基本的な考えは、国土交通省が公表している「原状回復のトラブルとガイドライン」とも共通していると考えられますし、特に一般的な賃貸住宅では原則的な考え方だと思われます。

では、「通常損耗」がどこまでをいうのでしょうか。この点は追ってお話します。

ADVICE ON ONE POINT

ワンポイントアドバイス

一定期間賃貸物件を貸すことが前提の賃貸借契約では、原則的には、通常損耗は賃貸人負担で修繕されるべきとされます。もっとも、オフィスの賃貸借契約では特約が結ばれていることが多く「原状回復のトラブルとガイドライン」は適用されません。注意が必要です。

【解説】通常損耗の借主負担は事業用賃貸ではなぜあるのか?工事区分とは?

萩原

「原状回復・B工事」適正査定のパイオニアよりアドバイス

賃貸物件には、使用目的が必ず明記されています。基本的に住居では、貸主借主が入居時の状態を「原状」と定めており、住居の原状を変更することもありません。使用目的が住居のため、ある程度経年劣化、経年変化も予測ができます。このため、民法では「通常損耗は貸主負担」とされています。(民法の原則)

事業用不動産では、使用目的が店舗、オフィス、オープンスペースエリアなどの事業により様々です。また、事業により不特定多数の人が出入りするため、経年劣化も大きな差があります。したがって、契約自由の原則に鑑みそれぞれの賃貸物件で原状を定め、原状回復内容を明文化することを貸主責任としています。

一般的に事業用賃貸借契約では、損耗に関わりなく床壁天井の全面貼り替えが多いです。店舗では、*スケルトン戻しが一般的であり、それぞれの賃貸物件により原状回復内容が違います。賃貸契約には、「工事は貸主、借主のどちらが施工するか?」、また「費用負担は誰がするか」を必ず明確に明記されています。「A工事、B工事、C工事の工事区分」を必ず確かめて下さい。

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