これまでお話したように、少なくとも居住用建物の賃貸借契約においては、通常損耗は賃貸人の負担となるのが原則と考えられています。

しかし、賃貸人が賃料に通常損耗の修繕費を織り込もうにも、賃借人がどの程度の期間入居するのか、入居によりどの程度通常損耗が発生するのかを予測するのは困難であり、一体いくら賃料に含めておけばいいのかというのは難しい問題です。

少なすぎれば、いざ修繕というときに修繕費が足りなくなってしまいますし、多すぎれば近隣の同種の賃貸物件に比べて割高の家賃になってしまい競争力が落ちてしまいます。

そこで、賃貸人は賃貸借契約時に、通常損耗の修繕費としてかかる分を後で支払う特約を結ぶことが多いのです(特にオフィスではほとんどそうです)。この特約が有効ならば、退去後に通常損耗について負担した分を賃借人から回収すればいいので、敷金を預かっている賃貸人からすれば、無駄に賃料を上げる必要もないのです。

このような面から賃貸人には通常損耗について特約を結ぶ意義があるのです。

他方で、賃借人は退去時にいくら請求されるか分からないというリスクを負うことになってしまいます。

ADVICE
ON ONE POINT

ワンポイントアドバイス

賃貸人は新たな賃借人を早く見つけるためになるべくきれいでいい設備に修復したいと考えています。その費用を賃借人に負担してもらうために賃貸借契約に原状回復義務の特約が盛り込まれていることが多いのです。

  • 横粂 勝仁(よこくめ かつひと)

    元衆議院議員・弁護士・税理士。東京大学法学部を卒業した年に司法試験に合格し、弁護士に。「総理」というニックネームでフジテレビ系恋愛バラエティ番組『あいのり』に出演。2009年衆議院議員総選挙で、神奈川11区において小泉進次郎氏らと戦い、比例復活で初当選を果たす。2012年衆議院議員総選挙では、東京18区において無所属で菅直人氏らと戦い、落選。現在は、弁護士法人レガロで代表を務め、文化人として各メディアでも活躍中。一男一女の父で、趣味はゴルフとクイズ。

  • 石川 道啓(いしかわ みちひろ)

    弁護士(第67期)。静岡県出身。中学生時代より弁護士になることを志し、2007年立命館大学法学部を卒業後、2011年に静岡大学大学院法務研究科を終了、2013年に司法試験に合格し、約1年間の司法修習を経て2014年12月より弁護士法人レガロに入所。以来同事務所の一員として稼働し、不動産関連の案件を中心に幅広い分野の案件を受け持つ。