オフィス移転の際、避けて通れないのが原状回復。できるだけ費用を抑えられる業者を選ぼうと考えている担当者の方もいらっしゃると思います。しかしほとんどの場合、原状回復はオーナーの指定する業者が行います。また、指定業者の出した見積りに納得できず、相見積りを出してみるテナントも多くありますが、出してもらった見積りをもとに価格交渉は可能なのでしょうか。
今回は悪質な指定業者に気をつけるためのポイントや業者を選べる時のポイントなどについて解説いたします。

<原状回復の工事業者について担当者が覚えておくべきこと>
原状回復を指定の業者が行うことのメリット・デメリット
指定業者が原状回復をする時の注意点
 ・指定業者とオーナーの関係に注意!
 ・なかなか見積もりを出さない時は注意!
指定業者以外で原状回復工事ができるケースもある!
 ・どういう時に指定業者以外が使えるか
 ・業者選びのポイント
単純な相見積もりは効果が薄い!?
 ・工事区分のチェックが重要
 ・ただの目安に終わってしまう場合も・・・
 ・相見積りより専門家へ相談を!

①原状回復を指定の業者が行うことのメリット・デメリット

「原状回復はオーナーの指定する業者が行う」というのは暗黙の了解のようになっています。大抵の契約書にはそう書いてあるはずです。どうして指定業者にやらせなければいけないのでしょうか。

退去していくテナント側としてはなるべく安く抑えたい原状回復費用ですが、オーナー側は不動産価値を維持していく必要があります。したがって粗悪な工事をされては困るので信頼できる業者に原状回復させるのです。
テナント側からすると指定業者について良し悪しは関係なく、工事の発注・受注だけの間柄です。ビルなど商業用建物を維持していく観点からすると、非常に合理的な考え方と言えるでしょう。

指定業者が工事するメリットを考えてみましょう。テナント側としては、業者選びで悩まずに済み、要求に従う限り工事内容によるトラブルはほぼ起きないと言っていいでしょう。オーナー側のメリットとしては、建物の品質を信頼できる業者によって確実に保つことができます。

逆にデメリットはなんでしょうか。それは、業者間の競争がないので、テナントは不当に高い費用を請求される可能性があるということです。多くのテナントは高額請求に気づかないまま支払ってしまったり、釈然としないけれども仕方ないと思ってしまいます。費用はテナントが支払うので、オーナー側にデメリットはないでしょう。

②指定業者が原状回復をする時の注意点

テナントは賃貸借契約書にない工事や、適正ではない工事費用に対して文句を言うことができます。
業者に対してうがった見方をし過ぎてもいけませんが、「そういったケースもある」という心構えは持っていてもいいかもしれません。

◆指定業者とオーナーの関係に注意!◆
悪質なケースとして、オーナーが指定業者と結託し、テナントに原状回復の範囲を越えた工事をさせたり、不当に高い金額で工事をさせたりする場合があります。
指定業者とビルオーナーの関係には注意するようにしてください。そこに利害関係がある場合は見積もりに問題がないか、特にしっかりと確認するといいでしょう。
「怪しいな」と思った場合は、専門家に見てもらうようにしてください。仮に悪質な問題がない場合でも、専門家がコンサルすることによってほとんどの原状回復費用が圧縮可能です。

◆なかなか見積りを出さない時は注意!◆
業者が不当な請求を隠すために、なかなか見積もりを出してくれないケースがあります。オフィスの退去には期日があるので、工事開始の遅れは遅延損害金と直結します。ギリギリまで見積もりを見せないことで、問題点があっても“泣き寝入り”させてしまうわけです。
こうしたケースを防ぐためにも、見積もりはすぐに出してもらいましょう。金額だけではなく、工事内容も出させて、契約書と突き合わせることが重要です。

③指定業者以外で原状回復工事ができるケースもある!?

原状回復の工事が、絶対に指定業者でしかできないわけではありません。一部の工事を任意の業者でやらせてくれたり、珍しいケースですがテナントの任意業者による工事を許可してくれることもあります。

◆どういう時に任意の業者が使えるか◆
グレードの高いビルはほぼ指定業者以外は認めてもらえません。しかし、中堅ビルの場合、持ち込み資産であるパーティションや弱電配線などの工事(いわゆるC工事)は指定業者でなくても認めてもらえるケースがあります。
個人オーナーの場合、指定の業者以外を認めるかどうかは両極端で、絶対に認めない方もいれば、全部の工事をテナント任意の業者にしても構わないという方もいます。
オフィスを退去することになった時は、一応確認してみるといいでしょう。

◆業者選びのポイント◆
オーナーが任意の業者を使ってもいいと言ってくれた時、どんな業者に頼めばいいでしょうか。工事に問題があり、やり直しやトラブルが発生することは避けたいですよね。
原状回復の業者を選ぶ際は、以下のポイントを参考にしてみてください。

・許認可を持っているか
・原状回復というものをわかっているか(確かな実績があるか)
・ビルオーナーの指定する仕様に従って工事ができるか
 かといって、オーナーの言いなりになるような業者を選んではいけません。

くれぐれも“安物買いの銭失い”にならないよう気をつけましょう。

④単純な相見積もりは効果が薄い!?

原状回復工事の価格交渉をするために、オーナーの指定する業者とは別の業者に相見積もりを依頼するテナントさんがいらっしゃいます。しかしやり方を間違えるとあまり効果がありません。

◆工事区分のチェックが重要◆
指定業者が出した見積もりと同じ工事区分に基づいて相見積もりを取ると、単価の違いによる差しか出ないので、劇的な変化はないでしょう。また、工事内容については認めているということにもなってしまいます。契約書にある工事区分に基づいているかのチェックが重要です。

◆ただの目安に終わってしまう場合も・・・◆
相見積もりを取っても、ビルオーナーから「指定業者の見積もりでないなら関係ない」と言われてしまうケースがあります。この場合、工事の価格が高いのか、安いのかということがわかっただけで、何の意味もありません。

◆相見積りするより専門家へ相談を!◆
原状回復費用を安くしたいなら、相見積りを取って自分たちで交渉するよりも、専門家にまかせてしまう方が確実です。
契約書にある工事区分と見積りの内容が合っているか、価格は適正か、交渉できる余地はないかなど、指定業者に対抗できる知識が必要だからです。
ビルオーナーも指定業者も“百戦錬磨”ですから、生半可な知識では逆にやり込められてしまうでしょう。また理論武装するにも大量の勉強が必要になります。それならば専門家に相談する方が確実というわけです。

この記事を書いた人

  • 堀田  猛

    コンサルタント 堀田 猛

    【店舗展開の内側も外側も商業施設のエキスパート】
    商業施設の企画・誘致・設計・施工に数多く携わり、商業施設コンサルタントおよび不動産・建築分野で「皆様のかゆいところに手が届く」をモットーとし活動中。商業施設や賃貸物件の「内装監理室」運営のエキスパートであり、施設側として資産区分(工事区分)の策定をしていた経験から、現在は原状回復・B工事に関しては知り尽くしており、コンサルタントとして多くの実績を生み出している。

ADVICE
ON ONE POINT

ワンポイントアドバイス

原状回復の工事は基本的にビルオーナーが指定する業者が行います。オーナーが指定する業者ですから、すべて任せてしまえばトラブルになることがほとんどありません。しかし、不当な請求をされる可能性もあります。

余計な費用を払わないためにも、業者に工事を依頼した後は早めに見積もりをだしてもらい、見積もり内容が正当なものか確認しましょう。オーナーと業者が結託して不当請求する悪質なケースもあります。オーナーと指定業者の関係に注意するといいでしょう。おかしいと思った時は早めに専門家へ相談することをおすすめします。

オーナーによっては、任意の業者を使ってもよいと言ってくれる場合があります。オフィスを退去する時は一応確認してみるといいでしょう。
業者が選べる時は
・許認可を持っているか
・原状回復というものをわかっているか(確かな実績があるか)
・ビルオーナーの指定する仕様に従って工事ができるか
に着目して信頼できる所を選びましょう。

価格を抑えるために相見積もりを出す企業がありますが、専門知識を伴っていなければ意味のないケースが多いです。価格交渉をお考えの場合は、自分たちでなんとかしようとするよりも専門家に任せてしまう方が確実です。オフィスを移転・退去する際は一度相談してみるといいでしょう。