原状回復とはもとの状態に戻すことであり、基本的に借主は入居後オフィスや店舗に増設した内装や設備を全て撤去しなければなりません。しかし、オフィスや店舗の環境を明かに向上させた設備などは、交渉してそのまま残した方が次の入居者にとっても環境においてもプラスになるものではないかと考えます。実は、そのような設備をオーナーに買い取ってもらう交渉をすることでオフィスや店舗の原状回復費用が削減できる場合もあるのです。

今回は、オフィスや店舗設備の買い取り交渉で原状回復工事費用を削減する方法をご紹介します。

<オフィスや店舗設備の買い取り交渉で原状回復工事費用を削減>
オフィスや店舗の価値を向上させるものとは?
買い取り交渉で原状回復費用が安く抑えられる

①オフィスや店舗の価値を向上させるものとは?

退去の際、交渉によりそのままオフィスや店舗に残した方が次の入居者やオーナーにとって有益とかんがえられるのはどのようなものでしょうか?

・採光が良くない箇所に照明機器を増設した。
・水道に浄水器を設置した。
・クーラーを設置した。

例えば、オフィスや店舗に上記のような工事を行っていれば、それらは次の入居者にとっても有益になると考えられます。わざわざ高額な原状回復工事費用を支払って撤去するよりも、交渉して残しておいた方が、無駄がなく環境にも優しいと思えますよね。

もしも、内装の大部分にまだ利用価値があると考えられるなら、オフィスや店舗の居抜き交渉をしてみるのも一つの方法でしょう。オフィスや店舗の天井や壁紙クロスなどをそのまま残しておいて欲しいという入居者がいれば、交渉次第で原状回復費用は大幅に削減することができます。

一方、スケルトン状態でオフィスや店舗に入居していて、退去の際にスケルトンに戻してしまうのであれば、一部の設備だけを残すというのは難しいと考えられます。その点はオーナーに相談して交渉してみましょう。

②買い取り交渉で原状回復費用が安く抑えられる

さて、原状回復と言えば撤去することだけをイメージしがちですが、オフィスや店舗に取り付けた設備はそのまま残せる、または買い取ってもらえる場合もあります。そうすればオフィスや店舗の現状回御工事費用は削減できることになります。

借地借家法第33条により、借主はオーナーに対して契約終了時に造作の買い取りを請求することができるのです。造作とは、オーナーの承諾を得て取り付けた建具や設備(畳、建具、電気・水道施設など)など建物の価値を増加させるものを言います。家具や備品など、独立性の高いものはそれに含まれませんので気を付けてください。

本来これらはオフィスや店舗入居後に借主が増設したものですから、契約終了の際には、全て撤去し、借主が原状回復工事費用を負担することになります。しかし、取り外したところでそれらは他で使い道がない場合もありますので、交渉によらず買い取るようにオーナーに請求する権利が認められているのです。これらを造作買取請求権といいます。

借主がこの権利を行使した場合、オーナーは拒否することができません。それだけで造作の所有権はオーナーに渡り、代わりに時価を支払わなければならなくなります。つまり借主にとっては、マイナスしか想定されない原状回復工事費用にプラスの箇所が生じるのです。

ただし、この権利を行使するためには、事前に交渉し、それらの設備について設置の承諾を得ておくことが必要です。買い取ってもらうことについては、設置する時点で交渉や承諾がなくても構いません。交渉なしに撤去の際に申し出るだけで良いのです。

予め特約によって買い取りが拒否されていれば請求権はなくなってしまいますが、交渉によって納得してもらうことができれば、買い取りとはいかずとも、そのまま残して良いと判断されるかもしれません。それだけでも、撤去するために必要だった原状回復工事費用は削減できることになります。

この記事を書いた人

  • 萩原 大巳

    コンサルタント 萩原 大巳

    【査定実績日本No.1 実績600社超のMr.原状回復】
    オフィス、店舗の移転および統廃合計画の責任者として、500社以上の実績がある。現在、大手消費者金融、銀行などの技術嘱託として活躍。プロジェクトマネージャーとして、原状回復の適正査定、AB工事の適正査定協議では600社超の実績があり、査定実績、日本No.1の専門家である。施工不良、敷金、保証金返還トラブル相談など、日々、企業の法務相談に多忙である。IFRS資産除去債務、環境債務の処理方法等について大手監査法人の主催にて講演を行っている。

  • 堀田  猛

    コンサルタント 堀田 猛

    【店舗展開の内側も外側も商業施設のエキスパート】
    商業施設の企画・誘致・設計・施工に数多く携わり、商業施設コンサルタントおよび不動産・建築分野で「皆様のかゆいところに手が届く」をモットーとし活動中。商業施設や賃貸物件の「内装監理室」運営のエキスパートであり、施設側として資産区分(工事区分)の策定をしていた経験から、現在は原状回復・B工事に関しては知り尽くしており、コンサルタントとして多くの実績を生み出している。

ADVICE
ON ONE POINT

ワンポイントアドバイス

基本的に、入居後にオフィスや店舗に増設したものは撤去するものです。原状回復工事費用について交渉する際は、あれもこれも残せば便利なのにと勝手な主張をすることは控えましょう。