原状回復はテナントが絶対に全額負担しなければいけないのか?

原状回復費用で悩む人

原状回復・B工事知ってトクするコラム

原状回復工事では色々なものを修繕しますが、すべての項目でテナント側が全額負担しなければいけないのでしょうか。今回は原状回復の工事でテナントが全額負担する必要のないものや全額負担しなければいけないもの、見積書や契約書で注意して見て欲しい部分などについて解説いたします。

原状回復って必ずテナントが全額負担するの?

オフィスを退去するにあたって原状回復工事をしなければならないことがほとんどです。見積もりを確認して「こんなに高いものなのか」と思う担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。
なかには「オフィスビルはオーナーのものなのだから、テナントが全額負担することはないのではないか」と考える方もいらっしゃることでしょう。

全額負担しなくていいものもある

実際のところどうなっているかと言いますと、テナントが全額負担しなくてもいい工事が見積もられているケースもあります。これは賃貸借契約時に決めた「工事区分」を確認するとわかります。
多くの契約書で「A工事・B工事・C工事」と書かれている部分です。このうちのA工事はオーナーが行うべきものですが、テナントにさせようとするケースがあるのです。ですから、見積もりに書かれている工事内容と契約書の工事区分を照合することが重要です。
契約は千差万別ですので、専門の知識がないと判断できないものもたくさんあります。そういう場合は専門家に相談してください。よくわからないでオーナーに文句を言って険悪になるよりも、ずっと確実かつスムーズに話を進めることができるでしょう。

全額負担するものも当然ある

逆にテナントが全額負担しなければいけない工事もあります。契約書に則った工事内容は、従わなければいけません。
契約時に「全額負担しますよ」と言っているのに、退去する時に「やっぱりやめた」は通じないのです。

オーナーが全額負担するケース

テナントが全額負担するように、オーナーが全額負担するものもあります。
先ほど少し触れましたが、いわゆる「A工事」はオーナーが行うべき工事ですので、テナントが負担することはありません。ただ、工事区分は契約書によって変化しますので「○○はオーナーが全額負担します」という風にここで断言することはできません。
また、賃貸借契約書に何も書いていない場合は、オーナーが全額負担する場合もあります。しかし、テナント側で持ち込んだものを撤去(収去)し、クリーニングするくらいはした方がいいでしょう。

契約書の特約には要注意

テナントは賃貸借契約書にない工事や、適正ではない工事費用に対して文句を言うことができます。
業者に対してうがった見方をし過ぎてもいけませんが、「そういったケースもある」という心構えは持っていてもいいかもしれません。

契約時の確認が重要!

原状回復工事は基本的に契約書に則って行われます。したがって契約時には工事区分だけでなく、特約の部分もしっかりと確認することが大切です。
おかしいなと感じたら「どうしてテナント側でその工事を行わないといけないのか」と問う姿勢が重要です。
オーナー側の負担で行うべき原状回復や、テナント側で行ってもよい内容をはっきりと区別して特約に記載してもらうことは、オフィス退去時の費用を抑えられるだけでなく、無用なトラブルを回避することにもつながります。

契約書の文言は気をつけよう

あいまいな表現や、オーナー負担かテナント負担か紛らわしい表現、テナント側の損になってしまう表現など、使用する文言に注意してください。
オフィスを移転する際は、専門知識のあるコンサルタントもいますので、退去関係だけでなく、入居時の相談もしてみるといいかもしれません。

ADVICE ON ONE POINT

萩原 大巳

ワンポイントアドバイス

オフィスの原状回復工事の見積もりには、テナント側が全額負担しなくていいものが含まれているケースがあります。工事区分を確認し、オーナーが工事すべきものが含まれていないか確認しましょう。しかし、工事の内容が契約書に書かれていることに準拠していた場合は、基本的にテナント側が工事を全額負担で行います。逆に言えばテナントがやる必要がないことが明記されていれば、その工事はオーナーが全額負担することになるのです。

原状回復は契約書に基づいて行われるので、契約時に原状回復範囲や工事区分、特約などをオーナー側と話し合うことが重要です。納得行かない内容はきちんと確認してみてください。
その際は専門知識に基づいて文言にも注意することが重要です。