オフィスや店舗などのテナントを退去する際、原状回復義務があるからといって借主は何でもすべて新品に買い替えなければならないわけではありません。オフィスの仕様状況に応じて、より適切な工事の手段を選択することで、オフィスや店舗の原状回復費用が大きく安くなるケースがあるのです。オフィスや店舗の移転担当者からすると、すべて新しいものに買い替えなければならないと考えがちですが、費用を安く抑えられる可能性もあります。
今回は、オフィスや店舗の費用を安く抑える方法をご紹介します。
<オフィスや店舗の原状回復工事費用を安くするには>
①新品への交換にかかる原状回復工事費用
②修繕にかかる原状回復工事費用
③最も費用を安く抑えられる洗浄や清掃にかかる原状回復工事費用
①新品への交換にかかる原状回復工事費用
オフィスや店舗の壁紙や床、天井などを残して退去するケースでは、オーナーから通常それらをきれいにしてから明け渡すことが要求されます。
そして、その施工内容として、まずは全面貼り換えなど、これまでオフィスや店舗で使ったものを新品にするという選択肢が出てきがちです。
原状回復工事費用をテナントが負担するのであれば、当然、確実に新しくきれいなものになるのですからオーナー側にとっては、それが最も安心と言えるでしょう。
しかし、これらの施工は高額であり、中には「そこまでしなくてもいいのでは?」というケースもあります。
例えば、入居期間が短く、目立った汚れや破損もないのに、オーナーからは「とにかく新品にしなければならない」と言われた場合などは、施工内容について工事費用を安く抑える交渉ができる可能性があります。
②修繕にかかる原状回復工事費用
オフィスの壁紙や床に多少の損耗がある場合でも、修繕でまかなうことが出来れば、新品への交換と比べ、原状回復費用はずいぶん安く抑えられます。
たとえば、クロスメイクは、壁紙そのものを新品に交換するのではなく、表面の穴や傷を修繕してから染色剤を塗布することで、見た目を新品同様に再生させる方法です。ひどい汚れには残念ながら対応できませんが、貼り換えよりも安く、素早い施工が可能となります。
また、貼り換えると高額になりがちなフローリングも、傷を修繕して汚れを取り除き、コーティングすることでコストを安く抑え、新品に近い状態に仕上げられます。
大抵の場合、リペアという手法は、新品への交換よりも安く、仕上がりにも十分な効果が得られる場合があります。
もちろん、オーナーから貼り換えを要求されているのに、「新品に見えるからこれで十分」などと勝手に判断することは出来ませんが、双方が納得の上での判断でしたらこのような選択肢もあるということです。
③最も費用を安く抑えられる洗浄や清掃にかかる原状回復工事費用
最もオフィスの原状回復費用を安く抑えることができるのは、クロスクリーニング、カーペットクリーニング、フロアクリーニングなどのクリーニングサービスなどで解決できるケースもあります。
これらもリペアと同じく、汚れや破損の程度問題で、新品にしなければどうしようもない場合には使えません。しかし、プロによるクリーニングサービスは一般的にイメージする清掃や洗浄よりもずっと大きな効果を得ることができます。
特に、入居期間が短かった場合など、損耗がほとんどないケースでは、汚れを取り除くだけでも十分に原状回復として認められる可能性があるのです。
この記事を書いた人
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コンサルタント 萩原 大巳
【査定実績日本No.1 実績600社超のMr.原状回復】
オフィス、店舗の移転および統廃合計画の責任者として、500社以上の実績がある。現在、大手消費者金融、銀行などの技術嘱託として活躍。プロジェクトマネージャーとして、原状回復の適正査定、AB工事の適正査定協議では600社超の実績があり、査定実績、日本No.1の専門家である。施工不良、敷金、保証金返還トラブル相談など、日々、企業の法務相談に多忙である。IFRS資産除去債務、環境債務の処理方法等について大手監査法人の主催にて講演を行っている。

ADVICE
ON ONE POINT
ワンポイントアドバイス
きれいにしてオフィスや店舗を退去する、ということを目的に考えた場合、上記の方法については様々な検討の余地があります。ただし、原状回復工事の業者はオーナー側によって指定されている場合が多く、必ずしも希望するサービスが取り扱われているとは限りません。この場合、オーナー側に上記で記載した方法をもとに、交渉した場合、なかなかうまく交渉できることができないと思います。できれば、第三者の専門家に交渉に入ってもらって、希望する施工について提案してもらうなどの形が理想的です。そして、最後にそもそもオフィスの壁紙や天井の劣化は、通常損耗の範囲であれば、借主側が原状回復工事費用を負担する必要がない可能性もあります。少しでも安く費用をおさえられる場合がありますので契約内容をよく確認してみましょう。