オフィスや店舗における原状回復の坪単価及び相場とは【改正民法編】

原状回復・B工事知ってトクするコラム

コロナ禍の東京オリンピック開催、冬季北京オリンピック終わりも束の間ウクライナ戦争でエネルギー危機、食糧危機その上円安の資源高、賃貸借契約においても、明け渡しの際のオフィスや店舗における原状回復費の高騰問題が社会的問題化、原状回復があまりにも高い敷金が返還されないなどの相談が激増しています、2021年度消費者相談センターに相談された件数は8000件を超えました。

今回は、オフィスビル、ハイグレードビルの原状回復の坪単価や相場、特にスーパープレミアムビルにおける原状回復費用が高い原因を解説します。大手デベロッパーがオーナーの大型SC(店舗原状回復)も原因は同じです。

原状回復の坪単価と相場ってどのくらい?

原状回復の坪単価と相場ってどのくらい?

(※金額はすべて税別)

一般的に、オフィスや店舗の原状回復の坪単価や相場というのは、独立系の小規模ビルから丸の内にあるような超大型インテリジェントビルは、原状回復の費用は約2.5万円~50万円/坪と不透明でアンフェアです。

特にスーパープレミアムビルなどは、約10万円~50万円/坪が目安です。
一方、独立系の小規模ビル等は、原状変更にもよりますが約2万円~4万円/坪といわれてます。

つまり、グレードの高いビルほど高額です。

余談ではありますが、(株)スリーエー・コーポレーションでの事例として、弊社が担当した物件は60万円/坪にもかかわらず、同エリア、同グレードの他社ビルは、約6万円/坪でした。つまり、ビル側の運営のルール又ビルそれぞれで原状回復の内容も違い、丸の内などのスーパープレミアムビルの原状回復は中小ビルの10倍以上の価格差は当たり前の世界です。

実際のところ、原状回復費用については、まったく平均値が出せないというのが実態です。
店舗の原状回復については施工条件に夜間工事があり、商業施設の運営ルールによりスケルトン戻しで5割増し(オフィスと比較)と業界では言われています。

ハイグレードビルの原状回復費用が高額な5つの理由

原状回復が高い5つの理由

それでは、「ハイグレードビルの原状回復費用は、どうしてそんなに高額になるのか?」
その理由について、説明します。

賃貸人もしくは賃貸人が指定する業者以外施工不可

俗に「指定業者制度」という。品質維持は安心ですが、競争原理が働かないため高くなる。
ハイグレードビルの指定業者は、大手貸主サイド系列のビル管理会社、もしくは新築時の元請、ゼネコンが多い。ビル自体も集客力があり、地下街にはショッピングモール、低層回には商業施設、ホテルなどオフィス棟も充実している。

重層下請け構造

BM(建物維持管理)、ビル管理法を遵守のうえ賃借人に「安全・安心・快適を提供」するため、電気、空調、防災、ELV、建築など、様々な建設会社及びサブコンといわれる電気、その他設備会社が携わっている。

指定業者 (BM:ビル管理会社)


一次下請け(ゼネコン) 新築、大規模改修施工業者
二次下請け(各種大手設備会社) サブコン
三次下請け(大手設備会社の協力会社) サブコンの下請け協力会社
四次下請け(専門職人) 実質施工業者

四会連合約款により、「一式請負で分離発注といえども丸投げは禁止」と指導されている。現状は、優先順位として、賃借人に「安心・安全・快適を提供」するためのビルメンテナンスに関わる業者の重層下請け構造になっているケースが多い。

原状回復の範囲の不透明(原状未確定・原状回復範囲工事項目明文化の問題)

ワンフロア/ワンテナントなどの場合、共用部も原状回復の対象となり、電気・その他設備がインテリジェント化のため中央管理室で制御されており、賃借しているオフィス面積以外にも、配線、配管、コンピューターソフト基本データ設定など中央管理室及び共用エリアも原状回復の対象となるケースも多く見受けられる
(上記の判例は未だありません)

萩原

これ、原状回復義務ですか?

この問題をクリアするため、改正民法第621条により原状回復の定義範囲、工事項目の明文化を賃貸人の責任とされました

特別損耗の回復方法が貸主優位、通常損耗をすべて借主負担は有効

資産の残存価値にかかわりなく、すべて新品にするなど、特別損耗の回復方法で費用は大きく違う。

萩原

何でも最新型の建築資材に交換、これ本当に原状回復義務ですか?

この問題をクリアするため、改正民法では原状回復の定義、範囲工事項目の明文化及び借主に不利益な工事は借主に理解させ、証(エビデンス)を残すことは貸主責任とされた。これは特別損耗の回復方法、通常損耗の借主負担を厳しく審議されることを意味します

仮設準備工事、現場管理費、諸経費、官庁申請費、仮設の事務所新設など

原状回復をやる為の工事(原状回復から段取り工事を除いた工事を「直接工事」といいます)準備、段取り、管理費の割合が極めて高い、又、ビル運営のルールにより、技能士の夜間割増、警備員費など、契約書に記されていない事項が様々、見積内訳に記されており、極めて高額になるケースが多いように思います。

萩原

この問題も原状回復の定義範囲工事項目の明文化の大きな争点になると思われます

ADVICE ON ONE POINT

萩原 大巳

ワンポイントアドバイス

指定業者制度は日本独自に発達した制度であり、入居の際のB工事、原状回復とも欧州・米国ではありません。ピッタリとした英語がないのもこのためです。
10年前に竣工したビルに入居し、10年で退去したと仮定すれば、20年前に戻すという考え方が原状回復です。内装材、設備材も廃番のケースが多く、今現在の環境に優しい内装、電気設備に改修するという考え方が、欧州・米国スタイルです。賃貸人、賃借人は、情報の格差があり、専門知識を有した担当者も賃借人側にはおりません。賃貸人側業者と対等に協議できる専門家は賃借人にはおりませんので、原状回復の専門家に相談されることがベストな選択と思います。
その際、相談された賃借人側の専門家は、原状回復、B工事など「いつ、いくらの費用が適正価格なのか?」プロ集団として成果物を予想できる経験と知識を有した専門家集団(PMR)にご相談ください。

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